大陸ボス解放への道その2
俺たちは
アル:私は別にどれでもいいんですけど、簡単なやつからやっときますか
カーボン:簡単ねえ……じゃあ白虎あたりから潰しとくか?
アル:弱いんですか?
カーボン:いや、ボスまで行くのに険しい山とかが無い
アル:それは楽なんでしょうか?
カーボン:少なくともボス戦はお話にならない戦力差だからな、四天王が大概雑魚なのでどこから言っても問題無いだろ? 昨日の玄武もダンジョンまで平坦って理由だけで選んだし
妹は少し操作をやめて止まった後でログを流し始めた。
アル:まあいいんじゃないでしょうか? ボス戦は茶番になるの目に見えてますし
アル:雑魚をわざわざ倒しづらいところにいるのを狙うのも面倒ですしね
アル:虎だかなんだか知りませんが私たちの前では猫も同然ですし
カーボン:ぶっちゃけ他の全部も雑魚なんだけどな……四天王全部推奨レベル一緒だし……
アル:じゃあさっさと行きましょうか?
カーボン:ああ、今回は西だからな
ギルドハウスからポータルを開いて町の西端にいき外に出る。問題はあまり西には美味しいモンスターがいないのであまり進めていないことだろうか。ポータルを開こうにも限界まで西に飛んでも割と先が長い。
カーボン:じゃあポータルで西の端まで飛ぶぞー?
アル:はーい
ポータルを開いて数マップ分ここより西にジャンプする。
アル:お兄ちゃん、ここからまだ十マップ以上距離があるんでしょう? なんでこんなに広い大陸になってるんですかね……
カーボン:なんでもなにもボリュームの水増し以外の理由があると思うか?
アル:訊いた私がバカでしたね……
というわけで俺たちははるばる西にある白虎のダンジョンに向けて歩き続けた。実のところ白虎のダンジョン自体はクソ楽な難易度だ。山越えさえ無ければ真っ先に倒していた四天王だろう。
アル:あのー……向こう側に山が見えるんですが……?
カーボン:あの山通行可能な場所が曲がりくねってるんだよなあ……
要するにオートランが使えないと言うことである。残念ながらこのゲームにプレイヤーが個人で乗れる飛行可能ユニットは無い。つまりひたすら歩くしか無いという事だ。
アル:もうすでに気が進まないのですが……
カーボン:じゃあ
アル:はぁ……しゃーないですね。さっさと四天王だかなんだか知りませんがぶっ潰してやりましょう!
やる気を出してくれたようで何よりです。とはいえ、そろそろ山が見えてきたのでオートランをオフにする。さて、親指が痛くなりそうな作業の始まりだな……
俺は目前にそびえる山を見ながら何故オープンワールドを謳っているこのゲームに通れない場所があるのだろうなどと実装組を恨みがましく思えるのだった。
トタトタ……タタタ
アル:お兄ちゃん……曲がりすぎじゃないですかね? この道とか嫌がらせとしか思えないんですが?
カーボン:大人の事情だろうな……
新大陸実装当初、コンテンツが事前発表で空っぽだと批判されたため新大陸に行かせてなるものかと解放条件が面倒になったとまことしやかに噂されていた。
実際のところがどうなのかは分からないし、現在ではコンテンツも充実しており昔のことを語る人は減ってしまったが、何にせよ、その名残としてのこのクエストが残ってしまったのだった。
さっきからちょくちょくアルがオートランの使用を試みて壁に詰まって手動で操作に切り替えているらしく、しょっちゅう壁にぶつかっている。
カーボン:諦めろ、ここら辺はオートランを使うようなマップじゃない
アル:うへぇ……クソ面倒くさいですね、ファッキン!
カーボン:ギリギリ禁止ワードに引っかからないのなソレ……チキンレースはやめてさっさと討伐するぞ
アル:はーい
そうしてしばらく主導でダッシュをしながらスタミナが切れたら調理スキルで料理を食べて回復してダッシュを繰り返すこと数十回、10個以上のミニマップを通り過ぎてからようやくダンジョンの入り口が見えてきた。
アル:塔……ですね?
カーボン:塔だな
アル:人が散々苦労しているところを高いところから見下していたと思うとクソムカつきますね
カーボン:まあここまできたら後はここの攻略だけだからさっさと片付けようか……
俺も大概面倒くさくなってきていたが、一度ここまできてしまえばポータルが開けるので心配することなく戦える。最も負けるはずが無いのだが。
アル:さあ突っ込みますよ!
ガチャン
ダンジョンの門が開くとそこには階段が塔の上の方まで続いていた。
アル:これをのぼれと……いい根性してやがりますね……
なんだか妹の心が度重なる理不尽によって荒んできているようだ。
カーボン:ちゃちゃっと行こうぜ、どうせ雑魚しかいないんだから
アル:ですね
らせん階段をのぼっているとちゃんと床のあるエリアに出た。そこにはモンスターが一体おり、おそらくボス前の試練のつもりなのだろう……
ペシ
俺のワンドでの打撃一発で沈みチョロい小ボスをどんどんと屠っていく、それから数回はあった小ボスは全て俺かアルの一撃の下に沈んだ。雑魚しかいないくせにダンジョンの面倒くささが割に合っていない。
そうしてボコボコに敵を倒していくとようやく上の方に支店を移すと光が見えた。どうやら頂上のようだ。
アル:敵キャラならじめっぽい地下でのそのそしてなさいっての……
文句をたれていたが、ようやくボスが見えてくると操作にキレが出てきた。
アル:私をここまで面倒な目にあわせた埋め合わせをしてもらいますよ……フフフ
どちらが悪役だか分からないような台詞とともにボス部屋の扉の前に来た。
カーボン:じゃあ行くぞ?
アル:さっさといきましょう。このクソボスをぶっ潰してやらないと腹の虫が治まりません!
ガチャリ
ボス部屋の扉が開かれると専用のボスが一体おり、入るとイベントが始まりボス部屋の扉がロックされた。
白虎:人の子がよくぞここまで来た、我が直々に手を下してやろう
白虎のその台詞とともに戦闘が開始した……瞬間
ランページ
ランページ2
ハイスラッシュ
白虎:ギャアアアアア
あっという間の出来事だった。よほど不満のたまっていただろうランページで強化したアルの一撃に当然耐えられず一発で沈んだのだった。
跡にはダンジョンから出るポータルが光り続けていた。
アルは即そのポータルに飛び込んだので俺も遅れて飛び込む。
アル:少しスッキリしましたね!
カーボン:お、おう……そうだな……
正直俺の打撃一発でも沈むボスにあれだけの攻撃はやり過ぎな気がしないでもない、しかし倒したのは事実なのでそこに言及するのはやめておこう。
アル:じゃあお兄ちゃん待ちまでのポータルよろしく
カーボン:はいよ
町付近へのポータルを開いて二人で飛び込んだ。
そこから町へと入ってギルドハウスへポータルで行く。
アル:じゃあお兄ちゃん、今日は疲れたのでもう落ちますね!
カーボン:ああ、ゆっくり寝てくれ。
そう言って落ちたアルを見てから俺はPCを放置して眠りについたのだった。
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