ボス戦(舐めプ
さて、ボス戦が一つ解放されたわけだが……
アル:ワクワクしますね!
カーボン:雑魚だぞ?
アル:お兄ちゃん! 雰囲気! もっとこう強敵と戦う感じを出しましょうよ!
コイツはギルドクエストのボスということでテンションが上がっているが、当然俺たちのレベルからすればクソ雑魚に決まっている。一体何がそこまでやる気を出させるのだろう? 妹のことはよく分からんな。
アル:ちなみに次のボスは何なんですか?
カーボン:ええっと……グランガーゴイルだな
アル:いやー強敵ですね! これは苦戦しそうです
カーボン:推奨レベル20の強敵とは?
緊張感の欠片もないボスを相手にするのにそんなに熱心になる理由がさっぱり分からない。当の本人はやる気満々なので黙っておこうか。
カーボン:ちなみにボスのダンジョンは攻略済みなので後はボス部屋へのポータルを開いて倒すだけのお手軽なクエストだ
ちなみにボス部屋はパーティによって区切られて存在しているのでポップを待つ時間すら必要ない。緊張感とは一体……
アル:ちなみに注意する点とかありますか?
カーボン:無いぞ。初期に実装されたボスだからただ単にステータスが高いだけしか取り柄がないボスだ。で、推奨レベル20、やる前から結果は見えてる
アル:なるほど、これは強敵ですね! お兄ちゃん、頑張りましょうね!
カーボン:お前が人の話を聞こうとしないのはよく分かったよ
アル:お兄ちゃん、RPGというのはなりきりを楽しむゲームですよ? 相手が強敵感を出しているならそれに応じてあげるのが人間というものでしょう?
カーボン:そうなのか? そうなのか……?
アル:そういうものです! じゃあ強敵相手に行きますか!
カーボン:じゃあポータル開くか?
アル:装備の準備はいいですか? MPの回復も?
カーボン:多分アルどころか俺にさえダメージが通るか怪しいボスだぞ?
アル:おk、じゃあレッツゴー!
俺がボス部屋前のポータル部屋へポータルを開く、ダンジョンとボスは別物、都合のいい考え方だ。だが嫌いじゃない。
ポータルを開きます
ひゅんとボス部屋直行のポータルが開通する、これは複数人のパーティでないと開けない特殊仕様のポータルだ。今回は俺と妹の二人パーティなので全く問題無い。
カーボン:じゃあボス戦行くぞー!
アル:はい!
そうして二人でポータルに飛び込む。
ジャンプ先には薄暗い部屋におどろおどろしい置物がいくつか置いてある部屋になっていた。
アル:お兄ちゃん、ここのボスはギミックとか無いんですか?
カーボン:無いんだよなあ……初期実装組は大抵ステータスが高い雑魚と変わんないぞ
アル:じゃあ私がタゲ取るのでお兄ちゃんが回復使っててくださいね?
カーボン:俺も殴るのに参加しても問題無いんじゃ……
アル:私がお兄ちゃんを守るというシチュにロマンを感じるんじゃないですか! お兄ちゃんはロマンが分かってませんね
カーボン:そんなもんかなあ……
アル:ところでお兄ちゃん、このボスの討伐経験はあるんですか?
アルが痛いところを突いてきた。
カーボン:無い……何しろギルド戦のボスだからな、一人ギルドには挑戦権すら無いんだ……
アル:ぼっちは大変ですねえ……
カーボン:いいだろ別に! それともアレか? 俺が大量のプレイヤーを率いるギルドの長になれるとでも思ってたのか?
アル:ま、無理でしょうねえ……
カーボン:つーことで突っ込むぞ!
アル:了解!
バタン
部屋のドアが開いて入ると同時に入り口にバリアがはられて逃げられなくなる。逃げる必要性がまるで無いというのはここだけの秘密だ。
グランガーゴイル:ウ……ゴゴ……魔王様にたてつくもの……死すべし
小物らしくロクな知恵も無い設定にされた哀れな敵だった。拡張性を考えて初期実装組には深いバックストーリーなどというものは存在せず、ただ魔王のためにプレイヤーを攻撃するというシンプル極まりない敵になっている。
魔王様とやらへの賛美を述べているムービーが流れている間、アルとtellでチャットをしていた。
アル:大物じみてますけど初心者向けのボスなんですよね?
カーボン:弱いことには定評があるぞ、遙か昔のレベリングがずっと大変だった頃にはそれなりの敵だったらしいがな
アル:気の毒に……ちゃちゃっと眠らせてあげましょう
グランガーゴイル:ウゴアアアアアアアアアアアア!!!
そんな会話をしているとボス戦が開始された。
アル:挑発!
知能の低いグランガーゴイルはアルの挑発一回でターゲットをアルに定めて攻撃にいった。このボスは魔法がろくに実装されていない時代のボスなので魔法をほとんど使えない。あらゆる意味で気の毒なボスだった。
ヒール、ヒール、ヒール
適当に回復魔法を打つがターゲットがまったくこちらに漏れてこない、アルのヘイト管理が完璧なのか、敵の知能レベルが非常に低いからなのかは不明だが、安心してヒールを打てる。
カーボン:おーい、そろそろ引導を渡してやれ
アル:はーい、とことん緊張感が無いですね
アルはショックスラッシュを使用した。
グランガーゴイル:グアアアアアアアアアアアア
当然だが一撃で沈んだ、レベル差40は伊達じゃない。
アル:いやー手強かった! さすが私に喧嘩を売るだけの敵なことはありますね!
カーボン:よく言うよ……俺に回復打たせながら自分は攻撃してなかったくせに……
アル:あー……バレちゃいました?
カーボン:当たり前だろ、挑発しかしてないのはログ見りゃ一発で分かる
アル:そーですかー……お兄ちゃんと一緒に死闘をした感じを出したかったんですけどねえ……
ボスは光の粒子になってすっかりと消えてしまい、ボス部屋から出口のバリアが解かれたので後は入ってきたポータルから出るだけだ。
カーボン:ドロップあるな……要る?
アル:んー……記念にもらっときましょうか
アルはガーゴイルシールドを手に入れた。
アルが喜ぶモーションをとる。
カーボン:お前の持ってる装備の方が圧倒的に強いだろうに、何がそんなに嬉しいんだ?
アルは肩をすくめる。
アル:お兄ちゃんと一緒に戦って手に入れたって事実が大事なんですよ! 初めての共同作業ってやつですね!
カーボン:お前のことはよく分からんな……
そんなやりとりをしながら入り口のポータルへと飛び込む、見慣れた平原の光景が広がる。後はギルド統括本部に報告に行くだけだ。
カーボン:そろそろいい時間だな、俺は報告してから寝るからお前はもう寝とけ
アル:はーい、それじゃおやすみなさい!!
カーボン:ああ、お休み
そうしてギルド統括へ行くと幾らかの褒め言葉とともにNPCが報酬金を支払ってくれた。クラフトクエストとそう変わらない報酬なのは気にしないようにしよう。
俺はそれから露店を開いて放置してから眠りにつくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます