黄金のブロンズの塊

アル:クラフトクエストが楽しいって思えたのは初めてですね!


 しばらく地獄のような討伐やら案内クエストやらをたくさんこなしすぎて感覚がおかしくなってしまったらしい……気の毒に……


カーボン:ブロンズインゴット64個は多いなあ……


アル:でも鉱石は勝手にモンスターに襲われて死んだりしませんから


カーボン:いや、それはそうなんだけどさあ……


 非生物のアイテムに感謝をするというのは随分とメンタルに堪えているらしいなあ。


アル:よっし! 高品質品も出来ました!


カーボン:納品するものだから通常品質でいいぞ


アル:お兄ちゃんは職人の気概というものが分かっていませんね?


カーボン:まだクラフターのスキルは大したことないんだから調子に乗るなよ


アル:でも鍛冶スキルはインゴット作成くらい失敗しない程度にはなりましたよ!


カーボン:まあ満足してるんならいいんだけどさあ……


 そんなtellを送りながらカンカンとハンマーを振るっていると鉱石が尽きてしまった。


アル:お兄ちゃん、鉱石はギルドの倉庫にありますか?


カーボン:無い、採掘は面倒くさいからサボってた


アル:お兄ちゃん、そういう時は『こんな事もあろうかと』と言うものですよ?


カーボン:採掘って面倒くさいからなあ……大手ギルドは下っ端に採掘させてるからいけるんだろうけど


アル:しょうがないですね……鉱山ツアーといきますか


カーボン:ピッケル装備忘れないようにな


 ちなみに非戦闘用装備だがレベルの暴力でピッケルでモンスターを撲殺できる程度には俺たちのステータスは高い。


カーボン:装備終わったか? ポータル開くぞ?


アル:おk、いけますよ!


 俺は鉱山へのポータルを開いてさっさと突入する。


アル:やっぱり鉱山はジメジメしてますね


カーボン:坑道の中で灯りが無いのは当たり前だろうが……


アル:そこにリアリティは求めてない


 身も蓋もない話だった、某有名RPGも初代ではたいまつで照らしていたのに続編では不要になったしな。


カーボン:さっさと銅鉱を掘ろうぜ、幸い錫の方は揃ってるし後は銅を掘るだけだろ


アル:はぁ……ちゃちゃっと掘り尽くしちゃいましょうか!


 アルはガンガンと近くの鉱脈にピッケルを振り下ろす、一応このゲームはタイミング等で影響がアルのだがそんなものはさっぱり無視して数で稼ぐ主義のようだ。


 ガンガンガンガンガン!


 ひたすらに掘り起こしている、ポイントによって掘れる鉱石に違いがあったりするのだが、数を求めて採掘を続ける。


 さて、俺も採掘しないとな……


 プロファイリング


 鉱脈から採掘できる鉱石を判別して、銅鉱が掘れるポイントを探す。


 おっ、ここはいい感じの鉱脈だな。


 このゲームでは鉱脈はキャラクターそれぞれに割り振られる、アルが掘った後のポイントでも俺が掘ることが出来る。


アル:あらかた掘り尽くしましたね……ハズレが多いです……


カーボン:適当に掘りすぎなんだよ、ポイントの回復まで休んでろ


 俺はカツカツと銅鉱を地道に掘っていく、アルは退屈そうに踊ったり手を振ったりとモーションを適当に試して回っていた。


アル:お兄ちゃん、普通鉱石は掘り尽くしたら数分でもう一回掘れるようになったりしないと思うのですが?


カーボン:そこにリアリティ要らんだろ


 そもそもキャラごとに採掘ポイントが回復していく時点でリアリティもクソも無いのは理解して欲しいものだ。


 そんなことを話していると鉱山の奥から反応が大量に向かってきた。


アル:あー、初心者さんがやらかしましたね


カーボン:だろーなー、この辺の鉱山でも奥の方にはアクティブモンスターいるからな


 俺たちは呑気に構えながら奥から出てくるモンスター達を眺める。


 HPバーが短くなったキャラが俺たちの所にやってきた


アル:ヒールかけます?


カーボン:デスペナが無いんだから放っておこう、死んで覚えるのも大事だからな


 無惨にも洞窟から出るエリア移動中に止まったところでキャラは無惨に死んでいた、多分洞窟の出口でエリアが変わった時に倒れて表示されるだろうな。


カーボン:さて、これの山を片付けておくか


アル:ですね


 トレインされたモンスターの群れにピッケルを振り下ろして屠っていく、鉱山程度のモンスターに苦戦などしないのだが……


アル:アハハ! モンスターがゴミのようです!


 残酷な光景が繰り広げられたのだった。


 リアルだとピッケルで殺された生き物はかなりグロいことになりそうだが、ここはゲームだけあって姿は変わらず、HPがゼロになった時点で光の粒子になって消えていく。


 平和な世界だなあ……


 あらかたモンスターの討伐が終わった後、鉱石の採掘ポイントが復旧したので再びピッケルを振り下ろす。


 アルは運任せにガンガンポイントを殴り続けていく。


アル:よし、50個到達しました!


カーボン:俺も60個くらい集めたし帰りのポータル開くか?


アル:お兄ちゃんの方が採掘コマンド使ってないのに多いのは納得いきませんね……


カーボン:効率無視してりゃそうなるよ……その代わり銅鉱以外のものも結構掘れただろ?


アル:そうですね! 私も結構頑張った!


 そうして周囲にモンスターがおらず、詠唱の邪魔をされないようにしてポータルを開く、プリミアの目前に開けばいいだろう、都市内直結が出来ないのが不便だ。


カーボン:んじゃ帰るぞ


アル:りょ


 ポータルをくぐって町へと入っていく、鍛冶ギルドの炉を使うために都市内転送を使う、これなら直接都市内ポータルを開かせて欲しいものだが、防衛上の理由などという設定が盛られているのでしょうがない。


 ここにリアリティ要るかなあ……?


 さて、鉱石を製錬するぞ。


 ガンガンガンガン!


 アルはひたすら溶けた金属をぶったたいている、成功率を無視しきったパワープレイだ。


カーボン:アル、錫の鉱石の方は余分がそんなにないんだからもうちょい成功率考えろよ


アル:ああ、さっきの採掘で錫の方も無駄に取れたので多少効率を犠牲にした方が早いんですよ


カーボン:まあそれもどうかとは思うがならいいんじゃないか?


アル:よっし! ブロンズインゴット50個出来ました!


カーボン:早いな!


アル:これが効率というものですよ!


カーボン:ちなみに何回失敗して銅鉱と錫鉱無駄にした?


 アルはひゅーっと口笛を吹いた


 モーションでごまかしやがったな……まあいいや、納品物は手に入ったんだからな。


 ギルド統括本部の納品係に納品をしてなんとかクエストは達成できたのだった。

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