またまた討伐クエスト
カーボン:じゃあ今日はビッグボア討伐128匹な
アル:やるんですか……
カーボン:メインクエストに入ってるんだからしょうがないだろう?
ビッグボア討伐128匹、
どうも運営は数を増やせばいいと思っていたらしく、こうして大量のモンスター討伐クエストが拡張パック発売後も残っていた。もっともこのクエストをクリア済みのギルドに入るだろうと連中が想像していたことは想像に難くない。ギルド単位のクエストになるので大体数の暴力でクリアしていた。
アル:お兄ちゃん、ちょっとやってみたいことがあります、ヒールお願いできますか?
珍しく少しばかりはやる気があるのだろう、結構なことだ。
カーボン:普通のヒールでもレベル60くらいなら一発で全快に出来る程度にはINTがあるよ、安心しろ
アル:よし、釣ってきます
そう言ってアルは勢いよく飛び出していった、なんだか嫌な予感がするのは気のせいだろうか?
――
帰ってこない、もう五分くらい待っているのに帰ってこない。出先でやられたのかと思った頃になってアルはようやく釣ったモンスター全てを連れて帰ってきた。
カーボン:なんだよこの数!? 普通に処理落ちするんだけど!?
アル:とりあえず私にヒールを
ヒール
妹の1割くらい削られていたHPバーが一気に満タンになる。目の前には最新のグラボでも処理が追いつかなくなるほどのモンスターの群れがあった。
アル:いやーどれだけ釣れるか試してみたくって! 結構たくさん行けますね、実のところもっといけるんですけどPCが重くなったので帰ってきました!
カーボン:まあこのくらいどうにかなるけどさあ……
俺はモンスターの群れの中心に入って魔法をキャストする。
ライトニング・サークル
モンスター達は範囲魔法の雷に打たれてあっという間に倒れ伏してしまった、これが暴力的な魔力の差という物だよ!
アル:お兄ちゃん、私へのヒールでヘイト稼いでましたよね? なんで無傷なんですか?
カーボン:多少は受けてるよ、目に見えて減るほど受けてないだけだ
アル:魔道士がVITに振ってどうするんですか……
カーボン:ヒーラーは落ちないことが一番だからな!
俺は笑うモーションをする。
アルはため息をつくモーションをした。
アル:今ので何体くらい狩れましたか? 結構狩れたんじゃないですか?
カーボン:十三匹だな、単純計算なら十回くらいで終わるな……ただ……
アル:そこそこ効率がいいじゃないですか、何か問題が?
カーボン:ビッグボア以外も大量に釣ってきたよな? 効率のいい釣り方のフラッシュだと周囲一帯にヘイトを撒くからしょうがないんだが……他のプレイヤーの恨みを買うぞ?
他のモンスターを狩っているプレイヤーからすれば迷惑以外の何物でもないだろう。モンスターからのヘイトを買うのは構わないが、他のプレイヤーには嫌われたくない。
アル:でも挑発だと一体一体に使う必要があるじゃないですか? クソ面倒くさいんですけど……
カーボン:ビッグボアはアクティブモンスターじゃないから攻撃入れるか挑発するかしか無いな
アル:ヴォエエエエエエエ!! クッソ面倒くさい! 私はもっと効率のいい方法で狩りたいです!
いやまあ面倒くさいのは大いに分かるんだけどさあ……
カーボン:素直にビッグボアだけ釣ってくれば良いじゃないか?
アル:イノシシ狩りとか地味じゃないですか? 大量の敵に魔法ドーンってロマンを感じるでしょう?
そうだろうか? ネトゲのプレイスタイルなんて人それぞれではあるが、迷惑をかけないというのは基本ではないだろうか?
カーボン:じゃあ俺が地道に殴って狩ってくるよ、単純作業には慣れてるんでな
伊達にレベルカンストをスタート地点付近で達成したわけではない、ビッグボアくらい一発殴れば倒せる。
アル:それは困ります! 私の存在意義に関わるじゃないですか!?
カーボン:ここら辺なら後衛の俺でさえノーダメなんだから別にナイトやる必要もないんじゃないか?
アル:私は一応お兄ちゃんの盾という役割なのでお兄ちゃんが自分で全部やっちゃうと私がいらん子になっちゃうじゃないですか!?
カーボン:役割ねえ……
物好きだなとは思う、別に必要ないとも思う、でも本人のやる気を無下にするのもどうかと思う。
カーボン:まあいいや、じゃあビッグボアだけ釣ってきてくれ、回復は任せていいから遠慮なく瀕死になるまでたっぷり釣ってきていいぞ
結局俺はこういう形で折れた、アルがどこまでこの単調なクエストに耐えられるかは不明だが、きっと幾らかはやるのだろう。
アル:よし! じゃあたっぷり釣ってきますね!
そう言って駆け出したアルを見送りながら瞑想を積んで魔力をアップしておいた。そうして数分後、アルはたっぷりのボアを釣って帰ってきた、HPバーが目に見えて減っている、ダメージを受ける程度には数がいるようだ。
ハイパーヒール
ギュンとアルのHPバーが全快になる、そしてビッグボア達は回復魔法を放った俺に大量のヘイトを集めてきた。
カーボン:いい感じに集めてきたな
アル:褒めてくれてもいいんですよ?
カーボン:はいはい、えらいえらい
俺は自動回復の装備をつけているので攻撃を受ける側から全快まで回復していく、本来なら大した回復量ではないが、ダメージが少ないので回復量の方が多い。
マグマフィールド
大地が灼熱の赤になりイノシシたちは焼き肉になって蒸発していった。
アル:お兄ちゃんはこの威力の魔法が使えるのになんでこんな所にいるんでしょうかね……
呆れているアルを見ながらクエストの進捗に目をやる。65匹、半分を超えている。
カーボン:あと何回かまとめて釣ってくればクリアだな
アル:じゃあ次はもっとたくさん釣ってきますね!
――
こうしてたくさんのイノシシの死体の上で、『眠れる獅子』はギルドクエストをクリアした。
ギルド統括本部の担当NPCが定型句を言っているムービーを流しながらアルとtellで会話をする。
アル:この人達は適正な量って物を知らないんでしょうか?
カーボン:NPCに無茶を言うなよ……
アル:私とお兄ちゃんの戦いの成果が評価されるというのは悪い気はしませんね
おやおや、我が妹ながらチョロいにもほどがある。
そうしてこのクエストは完了したのだった。
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