ボス戦(クソ雑魚ナメクジ)

アル:お兄ちゃん! 今日はボス戦ってマジですか!


カーボン:マジだぞー……ザコだがな……


 妹に過度が期待を持たせてはいけない。今回は二人でも行けるクエストだ、前回のボス前ダンジョンさえ攻略してしまえばボス戦自体は二人でも問題無い。


アル:お兄ちゃんお兄ちゃん! ボス戦なので黄金の鉄の塊装備でいきましょうか?


カーボン:お前はもうちょっと謙虚なナイトになろうな?


 というかこの辺のボスはペシッと一発殴れば沈むので装備もクソもないわけだが、ボス戦にここまで緊張感がないというのもなんだかなあとは思う……


カーボン:これから戦うボスは初期ボスだからな? ザコ過ぎてビビるなよ?


アル:分かってますよ……俺TUEEEEEEEがやりたいんだから良いじゃないですか!


 まったく……今更初心者向けボスを倒してイキるのはどうかと思うのだがなあ……


カーボン:ちなみにボスドロップはビギナーワンドとビギナーソードだぞ


アル:めっちゃ欲しくないドロップですね……


カーボン:おっとtellが来た


アル:どうぞ


ジュリー:お前の居場所検索したんだけどまだアルテアにいるのかよw まさか今更ボス狩りでもする気かよ!? 虐殺もいいとこだなw


カーボン:分かってんじゃないか、今からボス戦の残虐ショーを始めるところだぞ


ジュリー:ここまで結果の気にならないボス戦も珍しいな、じゃあな俺は遙か先で待ってるわ


アル:お兄ちゃん? なんて言われたんですか?


カーボン:結果の見えきった勝負で興味も湧かないんだとさ


アル:ムカつきますね……なんで上から目線なんですか


カーボン:まあ初期で一緒にパーティ組んだ時もガンガン進んで行ってたからなあ……とうにエンドコンテンツやってる奴からすればこんなクエストに興味も無いだろうさ


アル:ボスの虐殺ショウを見せてやりたいですね


カーボン:そうなるのが目に見えているから興味がないんだろうな


 俺たちのレベルなら初期ボス『レッサーデーモン』くらい瞬殺してしまう、むしろ一撃で倒さない方が難しい。


アル:お兄ちゃん、私にちょっと考えがあるんですが……


カーボン:なんだ?


 ――


 そうして俺たちはボス部屋の前にいた……初期装備で。


 アル曰く、初期装備で一撃で屠ればそれなりに目立つんじゃないんですか? とのことだ。


 みすぼらしい装備でボス部屋の前に立っていると時々sayで『もうちょっとレベル上げた方がいいですよ』などのアドバイスをしてくれる人もいた。


アル:さあボス部屋に突っ込みますよ!


カーボン:はいよ


 ボス部屋のドアがバタンと開く、俺たちが突っ込むと部屋のドアは固く閉じられた。


レッサーデーモン:愚かなる人間よ、上位種たる我にひざまずくがよい! 心静かに殺してやろう!


 大仰な台詞を吐くレッサーデーモンくん、速攻で倒されることは確定しているので非常に気の毒なピエロ状態になっている。


 バーン


 戦闘状態へと移行した、タゲがアルへと向く。


 ぽかぽか


 殴られているのだが基礎レベルの差からまったくダメージが通っていない、必至の特殊攻撃等も自然回復の量に追いついては居なかった。


カーボン:俺が派手な聖属性で倒そうか?


アル:ここは私の力でねじ伏せるのもよくないですか?


 ボスが雄叫びを上げながら攻撃しているがまったくもって滑稽だった。


アル:さーてと、ぶっ飛ばしてあげますかね


 初期スキルのランページを打ち込むアル、ボスは部屋の壁まで吹っ飛ばされてHPゲージが0になった。


 ゲームだけあって肉体の破損もなく元気そうに呪詛を唱えながら光の粒子になって消えていった。


アル:やっぱザコですねえ……


カーボン:回復魔法要る?


アル:私のHP見て要ると思いますか?


 と言うわけで無事ボス部屋から出てきた。


ファー:おい、あのパーティボス部屋から出てきたぞ!?


ニール:初心者じゃないのかよ!?


 数人が驚いていたので俺たちはそこで元の装備に切り替えた。


フォーセット:ボスが気の毒だなw


スー:何故このボスに挑んだんだw


キキ:さすがに草が生えるわw


 俺たちの装備は大好評だった、装備品でレベルは大体想像できる、俺たちのレベルを知った皆は呆れと驚きを持って、レッサーデーモンに哀悼の意を表するのだった。


 そうしてプリミアに帰ってきた俺たち。


アル:いやー楽勝でしたねー


カーボン:当然だろう? むしろ負ける方が大変だろう


アル:圧倒的な力の差でねじ伏せるのって楽しいですね!


 こいつもいい性格をしているな……


カーボン:言っとくがアレは初期ボスだからな? 勧めていくともっと強いボスが出てくるぞ


アル:そうは言ってもねえ……お兄ちゃん最新の拡張パックのレベルキャップまで上げてるじゃないですか? まだローンチ時の場所しか開放されてないのに負けようが無いんじゃないですか?


カーボン:俺はただのヒーラーだよ、プリーストが杖で殴って勧めるとこには限度がある。


アル:でも攻撃魔法も少しはあるじゃないですか?


カーボン:まあそうなんだがな、俺はアルにもレベル上げをして欲しいものだが……


アル:私はのんびりいくタイプですからね!


 のんびりしているやつがレベル60になったりしないんだよなぁ……


カーボン:さて、討伐の報告にギルド統括へ行くかな?


アル:ですね、一々報告へいくのは面倒だと思うんですがねえ……こういうリアリティ、要る?


カーボン:倒した瞬間クエストクリアになったら不自然だろうが


アル:リアリティが必要なところと不必要なところがあるって話ですよ


 気持ちは分かるがなあ……


アル:なんで私たちより弱いであろう相手に下手に出なきゃならないんですかね?


カーボン:力が全てってものすごく殺伐とした世界だと思うぞ?


アル:偉そうにしているNPCもPvPに出てみればいいんですよ! 速攻で倒される未来しか見えません


 アルが攻撃できないNPCに苛ついているが、何はともあれクエストはクリアだ。無事報告をしたら後は次のクエストが待っている。


アル:ところでお兄ちゃん、次のボスは強いですかね?


カーボン:とっても手強いぞ?


アル:ほほう……どのくらいですか?


カーボン:心が折れそうになること必至だ


アル:へえ……そんなボスが序盤にいるんですか?


カーボン:ああ、最終クエストって言うんだがな……


アル:ぎゅああああああああああああああーーーーーーー


 そうして今後のクエストに対するアルの絶叫とともにギルド統括へのポータルを開くのだった。

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