ネトゲにおける経済活動と妹
カーボン:なんなんだよ、このクソクエストはよ!
そこにすかさずtellが飛んでくる。
アル:お兄ちゃん、諦めましょう?
俺が引き受けたクエスト『王様への献上品』は非常に評判の悪いクエストだ。
何故評判が悪いか? それはひとえにこのクエストが『お使い』以外の何物でもないからだ。
大陸の端から端まで大量のお使いを命じられていく、細々した物が多いのでとてつもなく面倒くさい。
しかも献上品と言うだけあって、高品質のしなばかりを求められる、錬金や縫製、鍛冶等のスキルが求められて、一部ではクラフターのはじめの鬼門などと呼ばれていたりする。
しかしクラフター事態はただの作業なので地味ではあるがその内成功するのでまだいいのかもしれない。問題は献上品リストに大量にレアモンスターの素材が存在していることだ。
本来なら大勢のギルドで攻略するので大人数でレアモンスターがポップするところに待ち伏せさせる舞台をたくさん持っている、翻って俺たちは二人ギルドだ、効率の差は明らかだろう。
アル:しかし出ませんねえ……『キングホーン』ってどのくらいでポップするんですか?
俺たちが今狙っているのは鹿の王、そこそこのレアものだ。
カーボン:攻略wikiだと数時間に一匹だったな
そう、レアモンスターはリアル時間でポップ間隔が非常に長い、廃人以外はギルドメンバーを大量に借りだして張り込むと言うのがセオリーだ。
アル:そのwiki信用できるんですか? 最近じゃ企業wikiが平然とありますよ?
カーボン:昔からあるところだからな、それなりに信用できると思うぞ
嫌いな新興wikiが企業の金を大量につぎ込んでいるのと違って非情に簡素なデザインをしており、wiki公式の貼る広告以外は貼られていない。
だから信用はそれなりに出来るはずだ。
大体企業作だと人口の多いとやつ以外wikiを作ろうとしないので
カーボン:ここがポップ地点なんだよなあ……
アル:お兄ちゃん、キングホーンって強いんですか?
カーボン:俺たちからすればクソ雑魚
アル:珍しいだけじゃないですか……王様ももうちょいマシな物を欲しがってくださいよ……
王様と言っても首都プリミア周辺を統治しているだけなので大した相手ではない、しかしよく人心が離れないなと言うくらいにワガママという設定だ。はた迷惑にもほどがある。
カーボン:今時のゲームだったら王様討伐クエストが実装されそうだな……
アル:NPCが無敵なのムカつきますね……
カーボン:まあRPGで終盤の村人がボスクスのキャラと渡り合ってることとかあるしそういうもんなんじゃない?
アル:なんとかクエストのアレですか?
カーボン:そうそう、だからNPC意外と強い説を提唱したい……ってポップした! いくぞ!
アル:いちばんのりー!
俺がキングホーンに一撃を入れて戦闘権を取得する、辻ヒール入門は出来るし、ターゲットを取れば襲ってくる敵モンスターだが戦闘権を放棄しないかぎり第三者が攻撃は出来ない、要するに
アル:討伐成功! ですね!
この辺ならレアモンスターでも余裕で単独狩りが出来るレベルなので問題無い。俺たちが危なげなくキングホーンを倒す。さあドロップは……
カーボン:よし! 角ドロップしたな!
アル:やりましたね! これでドロップしなかったら切れるところですよ!
良かった良かった。隣の部屋から「よっしゃあ!!!!!!!!」と大きな叫びが聞こえたが気にしないことにしよう。
カーボン:安心するなよ? これ納品物の一つ目だからな?
アル:このクエスト、スキップしません?
うーん……
カーボン:俺は課金無しで進みたいんだけど……
アル:よし、お兄ちゃん! バザーで買いましょう! どうせ納品物は売買不可になってないんです! 絶対そっちの方が手っ取り早いです!
カーボン:資金がな……
アルが不敵に笑うアクションをする。
アル:ふっふっふ……私がお兄ちゃんとギルドを組む前に何をしてたと思ってるんですか!
カーボン:お金持ってんの?
アル:財テクで10M稼ぎました!
カーボン:マジで!?
1Kは1000ゴールド、1Mは1,000,000ゴールドになる、言うまでもなくKはキロ、Mはメガだ。
カーボン:インフレ時期があったとは言えそこまで集めたか……
アル:まあ値上がりしそうな物を買っておいて上がったら売るだけの簡単なお仕事ですよ?
カーボン:経済学の闇は深いな……
アル:お兄ちゃんもリアルじゃあそれなりに稼いでるじゃないですか? ネトゲだと出来ないんですか?
カーボン:通貨発行量が決まっているリアルマネーの取引と、システムから無限に引き出せるゲームシステムをごっちゃにされても困るんだよ……
アル:そーいうもんなんですかねえ……
アル:ま、いいでしょう! 町へのポータル開いてください、買い占めますよ!
俺はプリミアへ続くポータルを開いた、二人が中に入った状態で町へとジャンプした。
アル:じゃあバザーを漁ってみましょうか!
そうチャットすると、アルはバザー街にならんでいる倉庫キャラ達の持ち物をざっと眺めていってドンドンと買い占めていった、放置していない――操作している人がいる――キャラクターがお礼の言葉を少しやりとりしてから買い込んで戻ってきた。
アル:いやあ、いい買い物が出来ましたねえ!
カーボン:そうなのか? ここで売ってるものはアルテア産の物がほとんどだろ? 必要な物意外そんなにないんじゃ……
アル:ま、良いじゃないですか! 納品しましょう!
そうして俺たちはアルテアのギルド統括部へ、王室への献上品を納めてクエストをクリアしたのだった。
カーボン:アル、どのくらい使ったんだ?
アル:ああ、残り7Mほどですよ? 今日は私このクエストで落ちますね
そう言ってログアウトしていくアルを見ながら、俺も株取引のウインドウを開いて小銭を稼ぐ投機を始めるのだった。
――翌日
カーボン:さて、次のクエストは……
アル:ちょっと私に観察スキル使ってみて貰えますか?
カーボン:え? ああ……
観察スキルは相手の装備等を見ることが出来る、見たからどうだという話でもあり、PvPエリアで使えないスキルなのであまり使い道のないものなのだが……
カーボン:所持金11M……!?
何故かあるの所持金が昨日より増えていた。
アル:ふっふっふ、アレから上がりそうな品をバザーキャラに渡しましてね、まあ無事値が上がってくれたわけですね!
カーボン:財テクのプロだな……
アル:リアルじゃさっぱり分かんないですけどね、ゲームだとなんとなく上がりそうな物が分かるんですよ!
そうして俺たちは金銭的余裕を持って、次のクエストへ向かうのだった。
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