ぎぃぎぃ

デザインの仕事をするようになってから、

色々な職業の方と接するようになった。

その中で聞ける話もまた面白いものがいくつかあります。

まぁよくあると言うか耳にする話ではあるのですが、

此度はカメラマンさんから聞いた話を1つ。


そのカメラマンさんは不動産屋さんと契約しており、

空き物件に足を運んで、インターネットやチラシ用の撮影をしてくるのです。

昼間の日の差し込みを撮った方がイメージが良いので、

夜に撮影に行く事は少ないそうですが、昼間でも嫌な部屋はあるそうです。

そんなある日、とある一軒家の撮影に行ったそうなのですが、

まぁまぁ山に入るらしく、昼間でも薄暗い場所にポツンとあったと言う。


鍵を開けて入ると玄関で既に鼻を刺すようなカビ臭さがあった。

撮影用に前日に清掃が入っていると聞いていたのですが、

お世辞でも綺麗とは言い難かったそうです。


まぁこう言う事も少なくはないらしく、車にはホウキなどの

簡単な清掃用具は積んであった。

軽く清掃を済ませ、気味が悪いのも手伝って撮影は捗ったらしい。

逃げるように立ち去ってデータ入稿を済ませた。


インターネットにも掲載され、チラシも無事に配布が終わった。

それから数日後、データ整理をしていたカメラマンが

あの一軒家の写真の中に変なものを見つけた。

それは自分の後ろ姿が写った写真だった。

カメラマンは直ぐに全身に鳥肌が走り回る様に立つのを感じた。

それもそのはず、一人で撮影に行ったのだから、その場に誰かがいて、

カメラのシャッターを切ったとしか思えないからだ。

加えてカメラマンともあろう人間がシャッターの音をこの距離で

聴こえないはずがないのだ、一人、家の中にいるのだから。


カメラマンは不動産屋さんの社長に写真を見せつつ、あの建物に

何かあったのかを聞いた。

『詳しくは知らないが、買い手が付かずに流れ流れここに来た物件でな、

資料には何も書かれていないが、家主の女性が自殺したと言う噂はある。

んまぁそれも真実かどうかは知らんけど・・・それかな・・・』

真剣な顔つきでカメラマンを見た。


『社長ー!!!!!山奥町(仮名)の一軒家の家主から

もう一度撮影に来て欲しいと電話が入ってますがー!!!!』


『え!!!!!!!!!!』


『この前のカメラマンに来て欲しいと言ってますー!!!』


『え!!!!』『ええ!!!!!』


ピッ・・・保留の1番を押して社長が電話に出た。

『お電話変わりましたー・・・・』


『もしもし?もしもし?』


『社長・・・どうしたんですか?』


恐る恐る聞くカメラマンの顔を見ながら受話器を置いた社長が言った

『ギィ・・・ギィ・・・ってなんか木の軋むような音がした』


そのカメラマンさんは、それ以来住宅撮影の仕事は受けていないそうです。

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