不思議な夜会に誘われて

第1話

　御来場の皆々様。

　本日は足元の悪い中、ようこそ御出で下さいました。

　今宵は『直観』をテーマに、皆様と楽しい一時を過ごしたいと考えております。

　まず、『直観』とはどのような意味かご存知でしょうか？

『直観』とは知識や経験に基づいた、無意識的な判断や閃きの事を言うそうです。

　世の中には『直観』が優れた方もいらっしゃいますよね。

　誰にも思いつかないような閃きをする。

　憧れますね。

　きっと『直観』が優れた方は、知識や経験が豊富な方が多いのでしょう。

　本日御来場頂いた皆様も、読書や執筆がお好きな方が多いと伺いましたので、それはそれは素晴らしい『直観』をお持ちの事と存じます。

　次の展開や言葉を予測したり、イメージしたりする作業に慣れていますものね。

　羨ましいかぎりでございます。

　ただ、私のような凡人も含め、独創的な閃きは出来ずとも、無意識的な判断自体は誰もが日頃から行っているものでございます。

　そこで、皆様の『直観』がいかに優れているのか、一つ試してみませんか？

　ちょっとしたお遊びですので、ぜひ気負わないで参加してくださいませ。

　もちろんペナルティーや罰ゲームなどもございませんのでご安心ください。

　私がこれからお話する内容を頭に思い浮かべながら、私が何という言葉を言わせたいのか、可能な限り早く判断をしてみてください。

　時間を掛けてしまうと『直観』とは言えなくなってしまいますからね。

　準備はよろしいですか？

　それではいきましょう。

　まず簡単なものから始めてみましょう。

　2、4、6、8、

　と言ったら思い浮かぶものは何ですか？？

「10」と思い浮かびますよね。

　ただし、2ずつ増えているから……と深く考えたわけではなく、知識や経験に基づいて無意識的な判断をしていますよね。

　もう一つ試してみましょうか。

　東、南、北、

　と言ったらいかがでしょう？

「西」がパッと思いつきましたか？

　方角というカテゴリーの中からまだ出てきていない物が候補に挙がり、同等の概念であるものを選択したのだと思いますが、実際はそこまで意識せずとも思い浮かびますよね。

　ではこちらはいかがでしょう。

　お、こ、そ、と、

　と言ったら思い浮かぶ言葉は何でしょうか？

「の」でしたか？

　こちらも、五十音の各行の最後の文字を……などと難しく考えることはなく、どちらかというと数字の時と同じように、何となくリズムで答えが浮かんだのではないでしょうか？

　次は少し趣向を変えてみましょうか。

　○○○○集団、○○○○機、スーパー○○○○、

　さぁどんな言葉が思い浮かんだでしょうか？　

「せんとう」という言葉を思いついたのではないでしょうか。

　色々と適合する言葉を当てはめてみた方もいらっしゃるでしょうが、皆様でしたらまさしく瞬時に閃いたのではないでしょうか？

　流石でございます。

　問題が簡単すぎましたね。

　失礼致しました。

　さて、そろそろお気づきなった方もいらっしゃるでしょうか？

　直観に優れた方は、訝しんで先ほどの会話を思い出してみたりしているかもしれませんんね。

　では最後です。

　その動物はなに？

　いかがでしょうか？

　おや、ネズミとすぐに答えられたあなたはやはり優れた『直観』をお持ちのようですね。

　お見逸れ致しました。

　皆様その素晴らしい『直観』を今後もご自身の作品や他者様のレビューなどに活かして頂ければ幸いです。

　さて、もうお別れの時間が来てしまったようです。

　お楽しみ頂けましたでしょうか？

　今宵もお付き合い頂き誠にありがとうございました。

　それではこの辺で失礼致します。

　またの御来場を心よりお待ちしております。