第五章 グソク大侵攻!
第74話 第五話 その1 グソク!侵攻!
ちゅん助に付き合って、早過ぎた寝床に就いてしまったせいで真夜中に目が覚めてしまった。
思えば元の世界では日付が変わってから寝るのが当り前で20時前に就寝なんてことは一度もなかったのだ。
起きてしまっても当然だった。
外の様子はやけに静かで屋根を叩く雨音も消えていた。3日に亘って降り続いた雨もようやく止んだ様だった。
熱狂に酔いしれるこの街でもこの世界の住人は眠りに就くのが早いらしく0時を過ぎる頃にはほとんど、と言うか全く人通りが無くなる。
その代わりに、といってはなんだが、飲み屋を中心とした歓楽街は昼間、いや相当、朝早くから開いているのだが…電気のないこの世界ではそれが当り前のサイクルなのかもしれないな。
時間は深夜の1~2時だろうか?いずれにせよ外の雰囲気から深夜である事には変わりなさそうだ、不意に窓の外から淡い白い光が感じられる事に気付いた。
確か普段は真っ暗なのに、なんだ?俺は不思議に思って窓を開け外の景色を見た。
2階にある俺達の部屋から見下ろす路地。そこには無数の白い光点がゆっくりと漂うように流れており、幻想的な風景が作り出されていた。
雨が完全に降りやんだとはいえ空にはまだ厚い雲が残っているらしく、星の輝きどころか月明かりすらも通さない、そんな雲が空を覆っている様だった。
それだけに真っ暗闇の中ではなおさら無数の光点が目立ち、幻想的な情景を浮き立たせていた。
(なんだこれ、夜光虫?いやあれは海の中の話だな)
(マリンスノー?いやいや!あれこそ深海の話だ…)
前の世界でこんな光景は見た事が無い、いや深夜にも働いてばかりで景色など見る余裕がなかっただけか。
あえて似た光景を挙げるとすれば、幼き頃に見たキャンプ場の蛍の淡い発光現象だろうか?いやあれはふわふわ飛ぶ奴も居たし、点いたり消えたり光の明滅があったはずだ。
眼下で流れる白い光点は、ゆっくりと川の流れの様に移動していた。それはまるで地上に降りた天の川の様だった。うっとりするような幻想的な風景だった。
(いったいどこに流れているんだ?)
俺は右から左に光点の流れる先に目を向けて遠方を見やった。
その時だった。
視線の先の白い光点が急に赤い光点へと次々に変化していく…
まるで血が流れる様な不気味な赤!
ガンガンガンガン!
ガンガンガンガン!
ガンガンガンガン!
ガンガンガンガン!
深夜の街に!不意に激しく打鐘が鳴り響く!
(なんだ!!??)
(アクリムで聞いた火事の奴より激しいようだが…?)
窓から見える街全体を見渡すが、アクリムの時の様に炎で上空が照らされる、そんな光源はどこにも無いようだが…
激しい打鐘に切り裂かれた!そう感じられるようなタイミングで上空の雲に切れ間が出来、街をうっすらと月明かりが照らした。
「!!!!!!」
「グソク!」
信じられない光景に俺は思わず叫び声を上げる。無数の光点は街の通りを埋め尽くすほどのグソクの群れだったのだ!
「なんで!」
「どうして!?」
ガリン平原で見慣れたグソクの密集も、ここガリンの街中で眼前で展開されると異様な、そして恐怖の光景であった!
寝惚けている頭では現状を理解できない!
一体何故!何故なんだぜ!?
ガンガンガンガンガンガン!
ガンガンガンガンガンガン!
ガンガンガンガンガンガン!
ガンガンガンガンガンガン!
打鐘はなおも激しく鳴り響く。街は深い眠りを一気に吹き飛ばされた形となりあちこちで次々と騒然となっていった!
そこかしこから悲鳴と怒号が飛び交い始め、たちまちのうちに大混乱状態となった!
俺は頭を激しく振って気持ちを落ち着かせる。
(ま、まず、ちゅん助を起こさねば!)
「ちゅん助!ちゅん助!大変だ!」
「敵襲!敵襲だッ!とんでもないグソクの群れが街に侵入してる!」
「むにゃむにゃ、慌てるなお、みっきー」
「ここは地獄の一丁目」
「固定目標よりわしらの基地を攻撃してくる移動目標の方が賞金は高いんだお…むにゃむにゃ」
「アホぉ~!寝惚けんな!だいたいその移動目標とやらが大量に襲ってきてるんだよ!」
「ここは、えりあ66、アスカ…わしは賞金貯めて必ず日本に…むにゃむにゃ」
「エリア66ごっこはもういいんだ!起きろよこいつ!」
俺はちゅん助を抱きかかえると窓辺へ運んで窓から外に突き出してから頭を小突いた!
「見ろ!外を!」
「街が…街が!大変な事になってるんだ!」
「う~ん?イズサン、わしをあれほど起こすなと…」
「…………」
「…………」
「…………」
「!」
「なんじゃあああああ~!こらああああ~!」
第五話
その1 グソク!侵攻!
終わり
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