第37話 第三話 その7 出口戦略
「しっかし教会もえげつないよな」
「まさかこの世界でもパクリがあるとは…」
「よりにもよって他の業者でなくて教会が出張って来るなんて、宗教も結局は、金って事かな?」
俺の問いかけにちゅん助は即答せず意外だった。
いつもなら悔しいお!悔しいお!と騒ぎ立てるはずなのだが…?
「ふふふのふw」
ちゅん助が不敵な笑いを浮かべている。
「なんだよ?あのまま続けてれば」
「それこそ一代で億万長者の財を成したってのも夢じゃなかっただろ?」
「ふふふのふw」
「庶民の商売を横取りに来るなんて、ここの教会もどうかと思うぜ?」
「いーや、実に実に話の分かる人達だったお!」
「何それ?どういう事だよ?」
「イズサン、ホントに教会さんがわしの商売を奪いに来たと思っとるお?」
「いや…実際そうだろ!どう見ても」
「ふふふのふw」
「まさか違うのか?」
「じつはあれ、あれはわしが教会さんに話を持ち掛けたんよw」
「なんだって~!?」
「どうしてそんな自分の食い扶持無くすようなことを…」
「なくしとらん」
「ふたたび!なんだって~!?」
「いいか?イズサン、あの御守りの大ブレイクはあそこまでとは正直予想外やった…」
「そりゃそうだろうが…」
「一気に流行ったもんは一気に廃れる」
「早目の手仕舞いは必須だったお…」
有頂天に踊っていた様に見えたちゅん助が、意外に冷静な判断をしていたことに驚いた。
「先物取引は知らぬうちに相場に紛れ込んで」
「民衆がどっと流れ込んで来た時にはさっさと抜け出す!」
「これが鉄則だお!」
「先物って…」
「実はああなった瞬間に…」
「あの道具屋と組んでアクリムリウムの現物、押さえとったんや!」
「そんな事まで!?」
「教会の需要以外皆無、教会さんにしても半ば慈善事業か公共事業みたいな感じでアクリムリウム購入しとっただけや」
「値段的にはくず鉄以下」
「逆に産廃処理にかけられようか?ちゅーあの金属、ごっつう買い占めたでw」
「街の名を冠した金属が廃棄されるってのは、如何にも聞こえが悪い」
「かといって全量買い取る必要もなし。教会さんも困っとったやでw」
「だからってお前、全ツッパとか…」
「まあ…あれはかなりの勝負やった!」
当り前だ!
今回は運が良かったに過ぎない。
「で、あの商売やが…」
「あのまま続けとったら、間違いなく、まず紛いもんやら粗悪品が出て来る!」
「確かに」
「そないな訳の分からんもんが出てきてみ?」
「こっちはまじめに商売しとるのに!」
「もしもの時、難癖付けられてまったく関係ない責任取らされるで?」
「これの大元が「教会」さんやってみ?そないな罰当たりな事!誰が考えますん?」
「確かに…」
「紛いもんならまだええわ」
「やばいんはうちのシマ横取りしようっちゅう悪党が現れたら堪らんで?」
「さいあく…命まで狙われる羽目になるで?」
「た、確かに!」
「そこでや、売れとるうちに教会はんに頭下げて事業ごと買い取ってもらったんよw」
「まじで!?」
「マジもマジ!おおマジやがな!教会はんもえらい喜んでくれましたがなw」
「なんちゅうてもタダ同然、捨てるかどうか迷うくらいの金属がちょいちょいと加工しただけで飛ぶように売れる!」
「廃棄は無くなる!」
「お金は入るし!」
「信者も増える!」
「ええことづくめでんがなw!」
「あの道具屋も教会へのアクリムリウム独占供給契約結べて涙流して喜んではりましたがな!」
「おかげであの道具屋の口利きでここらでの道具屋で、有利なしなもん回してもらえる約束まで取り付けましたでんがなw」
「そしえ教会はんからは売り上げの1%頂く手筈になってます~」
「まあ価格は10分の1になってしまいましたし1%は微々たるもんやけど?」
「教会は世界の各地にいくらでもありまっからコラ笑いが止まりまへんでw」
「おまけに道具屋みたいに、教会からはわいの通信石に熱心な信者たる、特別信者の証まで入れて頂いて!」
「これでどこの教会行っても優先的に相談に乗ってもらえるってわけやがなw」
「まあイズサン!」
「わしらドラクレ2で言ったら序盤の福引券で」
「ごーるどかーど手にしたようなもんやがなw!」
ぐわはっは!
とちゅん助が高笑い。
鮮やか!
鮮やかすぎる手法だった…
「でも店仕舞いの時」
「商売あがったりって嘆いてたのは…」
「ああ、あれ?」
「人の妬み嫉みはとっても怖いお?」
「最後は惨めに終わった、そう思わせた方が安全だお?」
「長引かせるとあれだけ欲しがったくせに」
「相場の10倍で買わされた!」
「お金返してっ!ってやり出す奴がきっと現れるお?」
「そうなる前に正義の教会が出て来て」
「悪徳商人のわしを駆逐した!」
「そう思わせた方が皆が皆満足するんだお?」
悔しいが、悔しいが正直、震えるほどちゅん助の手腕には感動を覚えた。
こいつはただの変態では無かったのだ!
「しかし、運が良かったとはいえあの御守りにあんなに需要があると分かってたのか?」
俺の問いにちゅん助はしばらく何も答えず、遠くを見つめていたが、静かに語り始めた。
第三話
その7 出口戦略
終わり
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