第9話 プロローグ その9 ギギギギギギ

「なんだ!?今の爆発は!」

「オーイ!誰か居るのかー!」


 遠くからかすかにであったが確かに人の声が聞こえた。


「イズサン!あれ!」


「ああ!」


「おーい!おーい!ここだお!ここに居るんだお~!!!ここなんだお~!」


 慌てて飛び出したちゅん助が声のする方へ駆けて行った!


「はやくはやく!こっちなんだお!」


「お前ら!姿が見えないと思ったら!」


「そんな事よりイズサンが大怪我してもう動けないんだお!」


「なんだと!?だからあれほど隊から離れるなと!」


「説教は後にしてはよ助けてクレメンス!」


 声の主の一人は隊長であった。ちゅん助に足を引っ張られるようにして数人がこちらへ向かってきた。


「おい!お前!酷い怪我じゃないか!」

「あの爆発は一体!?お前らがやったのか?」

「なんで隊からはぐれた?グソクが急に凶暴化してこっちも大変だったんだ」

「いま街にも隊にも治癒士は不足してるんだ、応急処置しかできないぞ!」


 隊長と隊員達は矢継ぎ早に口々に言葉を発しながらも慣れた手つきで俺の怪我の手当てをし、謎の彗星の爆発で焼け野原となった一帯を抜け安全圏まで俺達を移動させてくれた。


「ここまでくればもう安全だ」


「今、隊の他の皆がグソクの残党を狩りつつ随時撤退してきている」

「合流したら街まで運んでやるからしばらくここで休んでろ」

「出血の影響はどうだ!?意識は保ってるか?」


「なんとか」


 掠れた声であったがはっきりと言葉を発した俺を見た隊長はやれやれと言った感じで深く頷いた後、残りの隊員達と合流すべく平野に駆け出して行った。


 俺とちゅん助が残された形になり静けさに包まれた。


 既に座っているだけの体力も残されておらず仰向けに倒れ込んだ。


(助かった…助かったんだ!)


 あの絶望的な状況の中、奇跡的に掴み取れた現状を実感すると俺の閉じた目から涙が溢れた。涙が出る!という事は!


(生きてる!生きてるんだ!)


 気付くと緊張が解けた事もあってか傷はなおさら激しく痛んだがその事実が生への感動を強くする。


「うう…」


 俺の口から嗚咽が漏れた。


「ふぁーふぁーん(←泣いている音)イズサン!良かったんだお~!」

「わしはもうだめかと思った!」

「イズサンがやられて死んでまってわし一人取り残されるかと思ったら怖かったんだお~!」

「イズサンだけ死ぬところだった!わしを置いて死んだら嫌なんだお~イズサン死ぬところだったお~!」


 ちゅん助が仰向けの俺の腹に飛び込んで抱き付きながら何故か俺だけが死ぬところだったと強調して泣きじゃくった。


(俺が死ぬ死ぬって!俺死んだらお前も同じ運命だろうが!)


 心の中でそう思ってももう口に出す気力もない。疲労の蓄積が限界を超え意識が沈んでいく。


(寝たらダメかな)

(あの狙撃…砲…撃…?爆炎の正体は何だったのだろう?)

(声の主は誰だったのだろう?)

(なんとか礼を言わなきゃ……)


 そんな事をチラリと思ってもみたが強烈な睡魔に耐えられずちゅん助を腹に乗せたまま九死に一生を得た俺は安全な空気の中で眠りについた。


 ギギギギギギギギギギ


 そんな二人を草むらから見つめる妖しい白い光があった。


 プロローグ 

 その9 ギギギギギギ

 終わり

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