第36話


「真琴さん」


 学校に行くと、京子さんがやってきた。その京子さんは、ひどく慌てた様子で俺の目の前にやってきた。


「マユさんと公認の浮気デートしたって本当?」


 京子さんの言葉に、俺はひどく戸惑う。


「なにその公認の浮気デートって」


 ひどく背徳的な言葉が並んでいたが、そういえるようなことはやったかもしれない。


「私も、その公認の浮気デートがしたい!」


 京子さんは、そんなことを言い出した。


「千花ちゃん……!」


 京子さんは、期待して千花を見つめた。


「ダメ!」


 千花は厳しかった。


 嫌、普通だった。


許嫁が浮気デートとか、普通は嫌だろう。


「今回は違うの。今回は、取材のため」


 京子さんは、次回作を恋愛ものにしたかったらしくて、俺とデートして取材をしたいそうだった。京子さんのファンとしては、協力したい気持ちがある。だが、俺は千花の許嫁である。千花を傷つけるわけには行かない。


「千花が、ダメって言ってるからダメ」


 千花は、俺の脇をつついた。


「協力したいと思っているんでしょう。京子さんのファンだから」


 千花は、俺をじっと見つめる。


「いいよ。協力しても」


千花は、そういった。


「自分の許嫁が本のモデルになるなんて、なかなかないことだし。ただし、過激なことは禁止」


 やった、と京子さんは俺に抱き着く。


「だから、過激なことは禁止!」


 千花は、叫んだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る