第29話

マユと別れた。


 そんな俺は千花の家へと走った。


 千花は、俺の来訪にきょとんとしていた。


俺は、そんな千花を抱きしめた。


「ちょっと、どうした。真琴!」


千花は慌てながら、俺のされるがままになっていた。


だが、やがておずおずと俺の背中に手を伸ばす。


「真琴……なにがあった?」


「選んできたんだ。千花を」


 千花はとまどいながら、俺の話を聞いていた。

 

 しかし、意味を理解して微笑む。


「私のことを選んでくれた」


 千花は、嬉しそうだった。


「ありがとう、真琴」


 千花は、そう言った。


 千花が笑ったかどうかはわからない。分からないが、俺には笑ったかのように思われた。それは、きっと勝者の微笑であったに違いない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る