第28話

つないでと言いたげな手を俺は手に取った。


 マユは、満足そうにうなずいていた。


「デートだ。デートだ」


 そんな鼻歌を歌いながら、マユは進む。


 俺はマユに引っ張られながら、進んだ。


 マユと二人っきりでいったたといえばイオンだが、マユが俺を連れて行ったのは別の場所だった。マユが俺を連れてきたのは、ゲームセンター。


「この間の続きをいましましょう」


 そういって、俺とマユは勝負を開始した。


 様々なゲームで俺たちは勝負をして、俺とマユはとてもいい勝負をした。勝つこともあれば、負けることもある。そんな勝負に俺たちは熱中した。


「もう一回、もう一回」


「もう一回よ!」


 互いに、何度ももう一回と繰り返し勝負する。

 

 そんな子供みたいに、俺たちは勝負を繰り返した。


「ねぇ、真琴。私たちが、将来結婚したらこんなふうに毎日楽しいと思わない?」


 マユは、そういう。


 俺も、そうだと思っていた。


 マユと結婚したら、きっと毎日が楽しいに決まっている。


 それ以外の答えなんてないに決まっている。


 でも、俺が惚れているのは千花なのだ。


「マユ、俺はやっぱり千花がす……」


「それ以上は言わないで」


 マユは、人差し指で俺の唇をふさぐ。


「分かってるから……分かってるから、それは言わないでよ。私と一緒にいれば楽しい。それだけでいいじゃない」


 マユは、そう言った。


 それだけじゃだめだった。


「それじゃだめだ。選ばないといけない。マユが千花のどちらかを選ぶ決断をしなくちゃいけない」


 俺は言った。


「俺はやっぱり、千花のことが好きだ」


 一目ぼれだったのだ。


 一目で、この人だと思ったのだ。


 だから、今だって、いつだって、千花のことを選ぶのだ。


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