第23話
ラーメンを食べた後に、どこに行こうかという話になった。千花は「ゲームコーナー」と言った。意外とゲームが好きらしい。
「家にはゲームないから、こういうところでやるしかないんだ」
千花は、そう言った。
俺と千花は、色々なゲームをした。
音ゲーやアクション。クレーンゲーム。そのゲームも千花はなかなかの腕で、俺も集中してプレイしないと負けてしまいそうになった場面もあった。
「千花、最後にこれで勝負しないか?」
俺が指さしたのは、ゾンビのアクションゲームだった。洋館にはいって、出てくるゾンビを打ち殺していくアクションゲーム。そんなゲームを二人プレイでクリアしていく。
「なかなかの腕前だな」
「真琴こそ!」
千花は、最後のショットを決めた。
そうしてゾンビはすべて倒されて、ゲームクリアとなった。
「今日は楽しかったかも……」
千花は、そう言った。
「それはよかった」
デートしていて、その言葉が一番うれしいかもしれない。
俺と千花は、手をつないで岐路についた。千花の家は知らないから、俺が千花に引っ張られるような形だった。
「真琴は、私と一緒にいて楽しかった?」
千花は、そんなことを尋ねた。
「楽しかった」
俺は、自信たっぷりに答えた。
千花と一緒にいられてドキドキしたけど、間違いなく楽しかった。それを伝えると、千花は笑顔になった。その笑顔は、千花が見せた表情のなかで一番可愛らしいものに見えた。
「真琴、私との初デートは楽しかったんだよな。マユの時よりも」
マユのことを引き合いに出す、真琴は嫉妬しているようだった。
「マユの時は一緒に遊んでるだけだったよ。だから、千花と一緒のときとは全然違うよ」
千花は、ちょっとむっとしていた。
「でも、一番最初に一緒に遊んだのはマユ。私は二番。それが嫌だった」
千花は、俺を見つめる。
俺は、どきまぎしていた。
なにせ、千花は美しい顔立ちをしているのだ。そんな綺麗な顔をしている千花が、俺の近くにいる。どきどきしないわけがなかった。
「今度何かをやるときは、私と一番最初にする。いい、約束だから」
千花は、俺とそんな約束をした。
次に何かをやるときは、千花と一緒。
「だから、キスとかも私が一番最初だから」
千花は、俺にそう言明した。
「むしろ、今してもいいぐらいだから」
千花は、そういう。
「今って、それはさすがにムードとか人の目とかが」
イオンからの帰り道で、人通りも多い道。ここがファーストキスの場所なんて、あんまりだと俺は思った。けれども、千花はそう思っていないようだった。
「良い時なんて、きっとないよ」
千花はそういう。
「良い時なんて、全部なくて――所詮は勢いが大事なんだ。きっと」
そう言って、千花は俺に迫る。
俺は、動けなくなった。
そんな動けない俺に、千花は口づけた。
温かい感触に、俺の心臓がはち切れそうなほどにどきどきする。
千花が離れても、ドキドキは止まらなかった。千花も同じなのか、俺に顔を合わせようとはしなかった。
「さぁ、行こう」
再び、千花は俺の手をひく。
千花の言う通りなのかもしれない。キスに最善のタイミングなんてないのかもしれない。
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