第18話

 日曜日、俺は迷ったあげくマユに選んでもらった洋服を来ることにした。デート場所もあの日と同じ、イオン。別のデート場所が思い浮かばなかったのだ。


「うう……緊張するな」


 好きな人とデートするのが、これが初めてだ。マユもこんな心境だったのだろうか、と俺は考えた。だが、ちょっと考えてマユは緊張しているふうではなかったことを思い出した。思い出せば、マユと俺は途中まで気軽に遊んでいたにすぎない。


「おまたせ、真琴」


 そう言って、千花は登場した。


 千花は、今日も可愛らしい服装をしていた。今日はズボンスタイルだが、青色のサマーセーターが知的な雰囲気を醸し出している。


「ぜんぜん、待ってないよ」


「よかった」


 千花は、笑った。


 なるほど、このやりとりをするために待ち合わせ場所には早めに来なければならなかったのだなと俺は思った。


「どこのお店見る?」


 千花の言葉に、俺はドキドキしながら「どこでもいいよ」と答えた。千花と一緒に行ったのは、雑貨屋だった。色々な国の雑貨を集められた店で、千花は商品をじっくりと見つめている。

「こういう雑貨が好きなんだ」


「うん、色々な動物がモチーフになっているからね。こういうの見ているは好きだよ」


 千花らしいな、と俺は思った。


「真琴は、どんな動物が好き?」


 そう言われて、真琴は悩んだ。


 好きな動物と言われたが、普段は意識もしていなかった。


「ええっと、鳥とか好きかな。カラフルでいろんな種類がいるし」


「鳥ね。鳥って、恐竜から進化した生物だってしってる?」


 俺は首を振った。


 千花の目は輝いていた。まるでおもちゃを得た子供のようだった。


「たくさんの恐竜は絶滅したのに、一部の恐竜は鳥になって生き延びたの。こういう話が、私は好き。将来は動物を研究する職に就きたいと思ってる」


 千花の夢は、きっと叶うだろうと思った。


 だって、今からこんなにも努力をしているのだ。


 叶わないはずがない。


「真琴の夢は?」


 そう聞かれて、俺は困った。


 なにせ、俺には夢がないのだ。


 今まで何となくでしか生きていなかった。


「俺には、夢がない」


 俺は将来何になりたいといった夢がない。


 千花の前だと、それはひどく恥ずかしいことのように思われた。


「そうなんだ」


 それでも、千花はそんことを追求しなかった。


「なぁ、鳥好きしてはどんな飾りが良いと思う?」


 千花は、二つの鳥の飾りを見比べていた。


「左かな」


 俺が言うと、千花は嬉しそうに左の飾りを購入した。

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