第15話

「よーい、どん」


 マユが、スタートの掛け声を上げる。


 それに合わせて、俺は走る練習を始めた。


 こんな単純な練習で運動会のリレーで勝てるかどうか分からないが、それでもやらないよりはマシである。俺が練習を続けていると、千花がやってきた。どうやら上の図書室から、千花は俺の練習風景を見ていたらしい。


「なにをやっている?」


 千花は、呆れたように俺を見ていた。


「運動会のリレーの練習」


「別に勝つのが義務とかじゃないのに」


 千花は、そういった。


 けれども、俺は何かを頑張りたかった。


「千花を見ていると頑張りたくなるんだ」


 俺の言葉に、千花は眼を丸くする。


「千花が頑張っているから、俺も頑張りたくなる」


 そう言われた、千花はそっぽを向いた。


 けれども、その頬はほのかに赤くなっているような気がする。外気が冷たかったからだろうか。


「そんなことで勝てるとは限らないんだから」


 千花は、そう言った。

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