第11話

「行きましょう、真琴」


 マユは、俺に手を伸ばす。


 俺は戸惑った。


「マユ。俺は今、君を振ったんだよ」


「そうよ。フラれたわ。でも、私はあきらめたわけではないから」


 マユは、そういって笑った。


 まるで、最初から俺が千花を選ぶことを知っていたかのような雰囲気だった。


「マユ……その、ごめん」


「あやまらないでよ。別に悪いことをしたわけでもないし、私は傷ついてもいないわ」


 マユは、まっすぐに俺を見つめた。


「真琴は、私が嫌い?」


「嫌いじゃない。友人として大好きだ」


 その言葉に、マユは笑った。


「そのことを知っているわ。だから、私は傷つかない」


 マユは、自信たっぷりにうなずく。


「そしていつかは、私の魅力であなたを振り向かせて見せるわ」


 マユは、そう言った。


「さっそく、デートの続きをしましょう」


 マユの言葉に、俺はびっくりした。


「デートの続きって……?」


「だって、明日の旅行練習をしたいんでしょう?」


 マユは、そう言って俺を誘惑してくる。


 これはあくまでデートの練習なのだと。


「次は……私の行きたいところにいってもいい?」


 マユの言葉に、俺は戸惑いながらも頷いた。


「わかったよ。どこに行きたい?」


「そうね。ゲームコーナーに行きたいわ」


 マユが行きたがったのは、百円で様々なゲームができるゲームコーナーだった。家庭用のゲーム機とは違って、様々なゲーム機が並べられるとやかましい。だが、そのやかましさのなかでマユは楽しそうに笑っていた。


「この音ゲームを一緒にやりましょうよ」


 マユは、そう言った。


 俺はゲーム機にコインを入れて、ゲームをスタートさせる。音楽が流れてきて、決まったタイミングでボタンを押すゲームである。俺とマユは相談したわけでもないのに、息の合ったコンビネーションでゲームをクリアしていった。実は、この手のゲームは結構得意なのである。


「さすが!」


 マユの称賛の言葉。


「そっちこそ!」


 俺も、気が付けば笑っていた。


 もしもマユと結婚したら、こんなふうに楽しい生活を送れるだろうか。俺は、そう思いながらゲームをする。


「次はクレーンゲームをしましょうよ」


 マユは、像のぬいぐるみを狙っていた。だが、三回挑戦してもぬいぐるみはゲットできない。


「ちょっと代わってみろ」


 そういって、俺がクレーンゲームに挑戦する。すると像のぬいぐるみは持ち上がって、無事にゲーム機のなかから取り出すことができた。


「ほら、マユ」


 俺は、マユにぬいぐるみを渡した。


「あら?あなたは……」


 ふいに後ろから声をかけられて、俺は振り向いた。


 そこには、千花がいた。

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