第7話

「真琴、千花とデートするって本当?」


 マユに呼び止められた俺は、頷いた。


 日曜日に千花とデートする。許嫁とデートするだけなのに、俺はドキドキしていた。


「うまくやる自信ってある?」


 マユは、俺に尋ねた。


 俺はどきりとした。


 デートをうまくやる自信なんて、まるでなかったからだ。マユはそれを見抜いたように、大げさなにため息をついた。


「そんなことだろうと思ったわ。よかったら、私で練習をしない?」


 マユは、そんなことを言った。


 デートの練習。


 その響きは、なんだか背徳的だった。


「いいのかよ。デートの練習なんて」


「だって……私は今は許嫁がいないし」


 マユは少し照れていた。ツインテールの髪が表情を隠さなくて、マユが照れた顔を露にする。その表情は、なんだか弱弱しくて可愛らしいと思った。


「でも、俺はいるんだぞ」


「それは知っている。でも、不安でしょう」


 マユは、私に詰め寄ってくる。


 たしかに、不安はある。


「だったら、やっぱり予行練習はしたほうがいいと思うのよ」


 マユの言葉は、もっともだった。


「じゃあ、土曜日に……その練習させてくれ」


「ええ、いいわよ」


 マユは、ほっとしたような顔をしていた。

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