第6話

亮二のおかげで、だいぶ千花のことが分かった。


 そして、俺の想いと千花の思いの相違点も明らかになった。


 千花は好き嫌いの話を置いといて、まずは結婚したくないのだ。どうしてだかは知らないが、親を安心させるためだけに俺の許嫁になったらしい。

 

「二人の話を合わせると、しばらくは許嫁の関係を続けてもいいってことだな」


 亮二は、にこりと笑った。


 もっと根本的なところに問題が生じているような気がするが、亮二は関係なしだ。


「二人とも、今度の休みにデートしてみろよ」


 亮二は、そんなことを言い出した。


「デート?」


「なんで、デート?」


 俺と千花は、同時に疑問符を浮かべた。


「今はまだ、互いのことを全然知らないだろ。互いを知っておけば、考えが変わるかもしれない」


 俺は、思わず千花の顔を見た。


 千花は、嫌そうな顔をしていた。


 だが、亮二はそんなことは知らないというふうに話をつづけた。


「デートすることは、許嫁同士の義務だ」


 亮二はそう言って、千花の肩を叩く。


「……分かった。今度の日曜日に一緒にどこかにでかけましょう」


 千花は、そう言った。


 俺は、ほっとしていた。


 千花がいた図書室を出ると、俺は亮二の肩を抱いた。


「君はすごいな。簡単に千花とのデートをもぎ取った」


「俺は友人の恋を応援しているだけだよ」


 亮二は、にこりと笑った。


 イケメンだ、と俺は思った。

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