第4話
俺はしゅんとしていた。
千花に怒鳴られてしまったせいである。
やはり千花は、俺が許嫁だなんて嫌だったのだ。俺が落ち込んでいると亮二は「そんなこともあるさ」と慰めてくれた。
「それにしても、結婚が嫌ならどうして真琴の許嫁になったんだろうな」
断ればよかったのに、と亮二は言った。
「そうだよな……俺はいいのに」
ぼそり、と言ってしまって俺は赤くなった。
そんなことを見逃す亮二ではない。
「俺は良いのにってなんだよ。なにがいいんだよ」
「うっ、なんでもないって」
そうやって亮二を煙に巻こうとするが、亮二はしつこかった。俺に引っ付いて「なんだよー」とひたすらに俺の言葉について聞いてくる。
「俺は、千花のことけっこう好きだから別にいいんだけどって言おうとしたんだよ」
俺は真っ赤になっていた。
亮二はにやにやする。
「いいんじゃないか。許嫁なんだから、好きになったほうが」
「でも、俺は思いっきり嫌われてるわけで……あー、くそ!!」
俺は悪態をついた。
悪態をついて自体が好転するわけではないが、こうするしかなかったのある。
「でも、どうして真琴は嫌われたんだろうな」
亮二が、そんなことを呟いた。
「だって、許嫁になって日も浅いんだろ。だったら、よっぽど見た目がいやってわけじゃなきゃあそこまで嫌わないだろう」
そう言われてしまって、俺は少し落ち込んだ。見た目はどうしようもならない。
「やっぱり女子はイケメンが良いのかな」
俺は、自分と亮二の容姿を比べてみる。
おそらく俺は一般的な容姿をしていると思う。今まで生きてきて、容姿について何か不都合に思うことはなかったからだ。一方で、亮二は容姿に恵まれていると思う。
「亮二だったら、千花は満足するのかなぁ」
俺の言葉に、亮二は首を振る。
「そんなはずはないだろう」
「いいや、そのはずだって。なぁ、亮二って今は婚約者がいないんだろ。だったら、俺と変わってやってくれよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます