第53話 近所との付き合い方

「回覧板回してきて。」


『あーい。』


僕の家の地域にはまだ回覧板という文化が残っており、月に一回程度地域の情報が掲載された広報誌などが回ってくる。

妻と僕はどちらも目を通しており、その場の流れで次のお宅へ回覧板を回す人が決まる。

今回は僕が回してくることになった。



ー数分後ー


『ただいま。』


「おかえり。遅かったね。」


『お隣のOさんと話してた。』


「郵便受けに入れてくるだけでいいんだよ?わざわざインターホン押したの?」


『庭先にいたから直接渡すついでに世間話してきただけだよ。』


「ならいいけど、インターホン押して呼ぶのは迷惑だからね。」


『あーうん。まぁ。』


「Oさんの旦那さん?」


『いや、奥さんと話してた。』


「え!奥さんと話せるの!?」


『なんで驚かれてるか意味わからんけど、普通に話せるよそのくらい。』


「あなた愛想悪いから。」


『悪くないから!ニコニコ笑顔で話すわ!』


「逆に怖い。」


『旦那さんは仕事でいないみたいよ。子どもとふたりきりだって。』


「そんなことまで聞いてきたの。」


『あと、良かったら今度両家族揃ってご飯でもどうですかって。』


「え、なんて答えてきたの?」


『全然いいですよ、やりましょう。って。』


「えー!」


『なんで?』


「私に相談してよ〜。」


『断ったら気まずいし、妻と相談しますってのも具合悪いよ。』


「私ご近所さんとはそこそこの距離保っていきたいんだよね。」


『仲良いのはいいことじゃん。』


「仲良いと何か頼まれた時に断りたくても断れない状況になっちゃうでしょ?あまりベタベタしたくないの。」


『今後何十年もこの地で生活していくんだからその辺はある程度フレンドリーの方が何かと利点あると思うよ?息子のことも気にかけてくれるだろうし。』


「それ!息子のこと気にかけてくれるのはいいけど、変な面倒見のいい人につかまっちゃうと厄介なのよ。」


『そんな変な人いないよこの辺は。』


「そんなのわからないよ。」


『そりゃベタベタする必要はないと思うけど、あえて距離を取る必要もないと思うな。持ちつ持たれつ、お互い様で行ければいいんじゃない?』


「そんな甘くないのご近所付き合いは。」


『まぁ僕は僕の付き合い方でやってくよ。』



ー後日ー



???〈おーい、夫さーん!〉


『はい?』


???〈これ、あんたんとこの奥さんがキャベツ食べたいって言うから朝採ってきたよ!食べてなー。〉


『あっ、はい。すいません。』


???〈今度はキュウリ持ってくるわ!〉


『あー、すいません。ありがとうございます。(誰だこの人。)』



ーその日の晩ー


『知らないおじさんからキャベツもらったけど。誰あれ?』


「裏の畑のNさん。この前話しかけられたからお野菜美味しそうですねって言ったら、定期的に野菜くれるようになったの。」


『めっちゃご近所付き合いしとるやんけ。』



質問:近所との付き合い方

結論:そこそこのお付き合いでいい。



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