第45話 結婚記念日

先日、3回目の結婚記念日だった。


僕は記念日というものにあまり関心がなく、付き合った記念だとか誕生日とかいうものを特別祝ったりはしないタイプであった。


あの時までは。



それは5年前、まだ結婚する前のこと。


僕は仕事で長期出張となり、1ヶ月くらい家を離れていた。


仕事が多忙であったことや、毎日同僚と外食していたことなどが重なり、妻の誕生日を忘れてしまったのである。


それを思い出したのは妻の誕生日の翌日。


仕事でカレンダーを見ていた時、なにか違和感を感じたのだ。

その違和感の正体にその時は気付かず、仕事に熱中していた。


そして、その夜。


妻からLINEが来た。





「結局お祝いしてくれなかったね。」



 


そこで気づいたのだ。違和感の正体に。



全力で謝った。


電話しても出てくれず、LINEでのやり取りのみになっていた。


『ごめん!仕事が忙しくて!』


色々言い訳をこねたりもした。


「飲み歩いてばかりなのに仕事のせいにするんだ。ただ忘れてただけでしょ?」


逆効果であった。

素直に忘れてたと謝ればまだ許してもらえたかもしれないが、僕の悪いクセで言い訳をしてしまった。


『本当にごめん!今度帰ったらフレンチのお店に連れて行ってあげようと思ってたんだ!』


「そんなのどうでもいいよ。誕生日におめでとうってひと言が無かったのが嫌なの。」


『うん、ごめんなさい。反省してる。』


「反省とかいいから。あなたにとってどうでもいいことなんだね。」


『違うんだ!決してそんなことじゃない!ごめんなさい!』


「もういいよ。」



それから返信がなく、妻は不機嫌のままだった。

のちにフレンチをご馳走して機嫌は直ったものの、ご機嫌の立ち直りには苦労をした。


だから僕は記念日にはちゃんとお祝いをしようと決意したのだ。


それから妻の誕生日や結婚記念日にはお祝いを欠かさなかった。


そして、今。

3回目の結婚記念日が来た。


皆さんご存知のとおり、僕は小遣い制でお金がない。

だからささやかな花束とケーキを用意した。


当日の朝、あえてそこでは何も言わず、仕事から帰ったところで花束とケーキを渡そうと企んでいた。



そして、仕事から帰宅。



『ただいまー』


「おかえり。」


『はい、これ。』


「うわっ、なにこれ!?どうしたの!?」


『え?』

「え?」


『今日結婚記念日だから、花束とケーキ買ってきたの。』




「忘れてたわ!」




そんなもんだ。



質問:結婚記念日

結論:そんなもんだ。

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