第43話 ルンバが欲しい

掃除機の担当は僕だ。

毎朝家の1階の全ての部屋に掃除機をかける。

家を建ててからの習慣になっていることで、今となって当たり前のことだ。

しかし、その当たり前になるまでにはまたしても妻と論争が起こってきた。


それは約2年前のこと。



『掃除機かけるのなんて週一回でよくない?土日のどっちかでやろうよ。』


「だめ。そうやってるとだんだん部屋が汚れていくの。掃除癖をつけないと、掃除機かけた程度で家の掃除をやった気になって、満足しちゃうの。土日はもっと違うところを掃除しなきゃ。」


『そんな頑張らなくていいのに。半年に一回大掃除やればいいよ。』


「半年分の汚れの積み重ねは大変!そんな悠長なこと言ってるとこの新築の家もすぐ汚い家になるよ!」


『そうっすかー。』


「だから掃除機は毎日やります!毎朝!」


『毎回この重いの出してくるの嫌なんだけど。コンセント面倒くさいし。』



この当時、僕たちの家にはコード付きの紙パック式掃除機しかなかったため、掃除機をかけるのに苦労していた。


「でもこれしかないし。掃除機買うお金はない。我慢してやって。」


『年明けの初売りで安くなるからそこでコードレス買ってね。』


「はいはい。」



こうして、翌年にコードレス掃除機が手に入り、毎朝の掃除の効率が上がったのだ。


コードレスはかなり良く、充電の頻度は多いものの、紙パック式に比べて圧倒的に軽く、ストレスフリーな動きに感激していた。



しかし、人はより楽を、より効率化を欲するものなのだ。


『ルンバ買って。』


「いらん。」


『息子のお世話もあるから毎朝の掃除が負担になっている。』


「がんばれ。」


『初売りで買って。』


「いらね。」


『後輩が買ったみたいで、すごく良いらしい。うちにもあれば便利だ。』


「高い。無理。」


『それにペットみたいで可愛いらしい。』


「興味ない。」


『隅っこも掃除できるらしい。』


「去年コードレス買ったろ。手でやれ。」


『そんなー。』



「息子が乗って壊すのが目に見えてるだろ。」


『なるほど。幾つものおもちゃを壊してきましたものね。』



「ルンバが階段も昇って2階もやるようになったら買ってもいいよ。」



『未来のお話ですね。』



「それまで手で頑張って!あまり楽することばかり考えてると人間ダメになるよ。」


『同い年と思えないほど重みのある発言ですね。』



質問:ルンバが欲しい

結論:妻の許可が下りない

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