第38話 僕の職場の話(2)

僕の先輩にWさんという45歳の独身貴族がいる。

彼は、自分で稼いだ金は自分で好きに使いたい!自分の趣味に没頭したい!という考えの持ち主であった。

僕はこういう考え方は嫌いじゃないし、むしろ妻と結婚してなければ僕もこの考え方に行き着いたかもしれない。


僕の場合、趣味にお金を使いすぎる傾向にあって、かなり金の管理にだらしないので、結婚できたことは良かったことなんだと思う。



話を戻すが、先輩Wさんは趣味に没頭したいという欲求が強いがために女性とは無縁の生活となり、結婚から縁遠くなっていったのだ。




・・・と、同僚たちの間で噂になっている。




誰ひとりWさんに女性関係の話を聞いたことがなかった。

なんとなくタブーな質問という風潮が社内に流れていたのだ。



しかし、その沈黙を破る者がひとりいた。

僕の後輩でもあるA君だ。

彼は無鉄砲な性格で怖いもの知らず。

一言でいうとデリカシーがない人。

悪いやつではないけど、信頼できないなっていうタイプ。


その彼が遂に聞いた。



A「Sさんってなんで結婚しないんですか?」


S「しないんじゃなくてできねーんだよ。」


A「なんでですか?」


S「モテねーからだよ。言わせんな。」


A「趣味の合う人とかいいじゃないですか。」


S「そりゃいいけど、誰も俺となんて結婚してくれねーよ。」


A「そうかなー。」


S「俺なんかと結婚したって不幸になるだけだよ。」




A「あー、そういうネガティブなところがきっとダメなんすねー。」


S「ん?」


A「そういうネガティブなのって若い子がやれば母性本能くすぐったりとかありますけど、45のおっさんがネガティブなのは引かれるだけっす。」


S「・・・。」


A「結婚したいなら同じ趣味の人にガツガツ行くしかもう道はないっす!」


S「・・・どうしろっていうんだよ。」


A「マッチングです!」


S「マッチング?」


A「マッチングアプリで出会いましょ!」


S「いや俺なんか誰も相手にしないよ。」


A「共通の趣味があれば出会えます!」


S「やり方知らないし、俺の趣味バイクだからハードル高いって。」


A「大丈夫っす!僕がマッチングする秘訣伝授するんで!」



こうして、ズカズカと他人の心に踏み込んでSさんをマッチングアプリの世界に引きずりこんだ。


その1ヶ月後、Sさんは少し歳下の女性とツーリングに行く約束を取りつけたとAから聞いた。


Aは社員の一部から《サイコキューピット》と呼ばれるようになった。

デリカシー無い人は時と場合によっては人の役に立てるんだと思った。Sさんは迷惑してなさそうだからそのまま放っておくことにした。



質問:僕の職場の話(2)

結論:Sさん主役の話を書きたかったのにいつの間にかAが主役の話になった。まだ他にも面白い人がいるので、気が向いたら書きます。

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