第37話 僕の職場の話
妻が医療系の仕事をしていることは以前話したことがある。しかし、僕の仕事については明記したことがない。
特に隠しているわけではないのだが、話しても特別面白くないし、あまりピンとこない職業だから話さなかった。
今回も職名について話すことはしないが、職場の同僚に面白い人が何人かいるのでその人たちについてお話ししようと思う。
ケース①後輩S君
僕の部署にはS君という4歳歳下の男の子がいる。彼は僕を慕ってくれていて、仕事のみならずプライベートでも仲がいい。
よくゴルフに行くメンバーのひとりでもある。
そんな彼の口癖は《感銘を受けました》だ。
肯定的な性格の彼は、どんなささいな話を聞かされても感銘を受けましたと言う。
以前こんなことがあった。
僕『この前さ、息子が鼻水垂らしたままご飯食べてて、ご飯を口に運ぶたびに鼻水ドレッシングがかかってたんだよね。それでももくもくと食べてたから鼻水美味しかったのかな。僕も今度息子の鼻水をご飯にかけて食べてみようかな。』
こんな他人が聞いたらどうでもいいような家族の日常を冗談交じりで話していた。
S「感銘を受けました!」
『え?』
「夫さんのその愛息精神!感銘を受けました!」
『え?どこに?』
「鼻水でも食べられるという愛情のカタチ!すごいです!」
鼻水でも食べられる愛情の形ってなに!?
『いや、冗談なんだけど。息子の鼻水でも食べるのはちょっと・・・』
「いいえ!他人の鼻水なら、食べたら美味しいかな?なんて冗談でも言えないはずです!愛する息子だからこそそんな言葉が出てきたんです!すごいです!」
『お、おう・・・。』
「やはり、親とはそういうものなんですね!目に入れても痛くないなんて言葉がありますけど、あれも正しい愛情のカタチなんです!」
『う、うん。』
「僕も早く親になりたいなー!夫さんみたいにたっぷり愛情を注ぐぞー!」
『まぁ、ほどほどにな。』
彼は感銘を受けて、人を肯定してくれるのだ。僕としてはただの雑談にすぎなかったのだが、こういう返しをしてくれると気持ちがいい。
他にも、お昼にお小遣いの節約のためにカップラーメンを食べてたら感銘を受けられたことや、通勤の際に革靴をやめてスニーカーにしたことについても感銘を受けられた。
ひょっとしたら彼はものすごい逸材で、カウンセラーになったら大活躍するのではないかと思っている。
しかし、彼にも怒ることがあった。
それは彼の後輩のF君が自転車通勤からバス通勤に変えたことだった。感銘を受けても良さそうなものなのだが、S君は、
「健康に悪いしお金も勿体ないです!」
だそうだ。
とりあえず彼は他人のために褒めることができるし、怒ることもできる、いい子なんだ。
質問:僕の職場の話
結論:この子は大事に育ててあげようと思っている。
次回、ケース②先輩Wさん
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