第36話 温泉が好き

近所に日帰り入浴ができる温泉施設がある。


僕たち夫婦は温泉が好きでよくそこへ行くのだが、息子をどちらが連れて入浴するのかという話し合いが必ず行われる。


今のところやや僕の方が数が多い状況。


この休日もそこへ行くことになった。


僕『今日は妻ちゃんが息子連れて行って欲しいな〜。』


妻「えー、前回私だったじゃん。今日は夫よろしく。」


『今日は“ととのう”から。』


「前回もじゃん!」



説明しよう。

“ととのう”とは、サウナを楽しむ方法のひとつで、サウナ→水風呂を繰り返し、生死を彷徨うことでたどり着く快感の境地のことである。



『やっぱり高音サウナのある施設に来たらやらなきゃならないのだ。息子がいてはそれができない。頼む。』


「えー。私だってゆっくり入りたいし。」


『お願い!コーヒー牛乳おごるから!』


「じゃあジャンケンしよ。」


『ジャンケンは僕負けるから!』


「それなら次から2回連続で夫が息子連れて入るならいいよ。」


『よし!それで手を打とう!』


こうして“ととのう”を手に入れることができることになった。

※息子と一緒に入るのも楽しいので、別に息子と一緒に入るのが嫌なわけではありません。


「じゃあ1時間後集合ね〜。」


『はーい。』



ここから僕1人の時間が始まった。

それはそれは壮絶な戦いであった。

このサウナは高温のため、長時間の滞在により意識は朦朧とし、ふらふらの状態でサウナを出て水風呂へ浸かった。


急激に冷やされる体により更に意識は遠のく。


そして、遂にたどり着く。



無我の境地へ。





気がつくと1時間はとうに過ぎていて、慌てて温泉を出て、待合室に向かった。

妻と息子がそこにいた。




「次回以降3回連続ね。」


『はい。遅刻してすいませんでした。』



質問:温泉が好き

結論:“ととのう”は気持ちいいけど、家族と来ている時は控えようと思った。

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