第34話 義母がやってきた

我が家から車で1時間程度のところに妻の実家がある。

息子が産まれるまではほとんどうちに遊びに来ることはなかったのだが、息子が産まれてからというもの月1回は義母と義父が遊びに来るようになった。


前もって連絡してくれれば良いのだが、たまに連絡なしに突然やって来る時がある。





ピンポーン




義母「こんにちはー!」



夫『あ、お義母さん。どうしたの?』


「遊び来ちゃったー!」



『今妻と息子買い物行ってていないよ?』






しばらくの沈黙。






「まぁいいや!すぐ帰ってくるでしょ?」


『あ、うん。もうすぐ帰ってくると思うよ。どうぞ、あがって。』


「お邪魔しまーす!」




『今日お義父さんはいないの?』


「今日はゴルフだって。」


『そうなんだ。お義父さんもまだまだ元気だねー。』


「そうなのよ〜。」





しばらくの沈黙。





『あ、紅茶でも飲む?妻がお客さん用に買い溜めしてるから。』


「ごめんねー。ありがとう。」


『ちょっと待っててね。』





「夫ちゃんも大変でしょー?」


『ん?なにが?仕事?』


「ううん。あの子。」


『あの子?ああ、息子?まぁ子育ては楽ではないよねー。楽しいけど。』


「違う違う。うちの娘(妻)のこと。」


『ああ、そっち?』


「あの子昔からあんなんだからさ。気も強いし、自分の意見曲げない頑固者でしょ?お父さんに似たのよねー。」


『いや、あの性格はお義母さん似だと思いますけど。』


「もー、私はあんな頑固じゃないわよ。」


『姉さんも言ってたよ。妻の性格はお義母さんそっくりだって。』


「あの子余計なことを。」


『でも別に大変なことばかりじゃないですよ。頑固者なのは間違いないですけど、僕以上にしっかりしてますし、正しいことをする人なんで、信頼もしてます。』


「あー、そう?」


『僕は妻と一緒にならなきゃろくでもない人間になってたと思うんです。ある意味僕を1番教育してくれたのは妻かもしれません。』


「あの子は昔から顔だけは良いからよくモテてたのよ。でもあの性格でしょ?みんな長続きしなくてねー。夫ちゃんと付き合ってからは家でもあなたの話を楽しそうにするようになって。いつのまにか結婚しちゃってね。娘もあなたに育ててもらってるのよ。」


『いえ、そんなことはないです。いつも喧嘩ばかりですし。』


「夫婦なんてそんなもんよ。何度も何度も喧嘩してお互いの気持ちを徐々に擦り合わせていくの。そうやって成長していくものなのよ。」


『そうですね。喧嘩は数えたらキリがないですけど、仲は深まってると思ってます。』


「本当にあの子の旦那さんが夫ちゃんで良かったと思ったわ。ありがとう。」


『こちらこそありがとうございます。』



妻「ただいまー!あ、お母さん来てたんだ。」


『妻と息子が帰ってきたみたいですね。』


義母「じゃあ私はそろそろ帰るかな。」


『えぇ!?今来たばかりじゃないですか!』


妻「えー?もう帰っちゃうの?息子抱っこしていきなよ。」


義母「今日は夫ちゃんといいお話が出来たから満足したの。息子ちゃんを抱っこだけして帰りますね。病院の帰りに寄っただけだから。」


妻「いいお話?」


『お義母さんまた遊び来てくださいね。いつでもお待ちしてますから。』


義母「はーい。ありがとー。また来ますね。息子ちゃんバイバーイ!」


妻「もう帰っちゃうのか。気をつけてねー。」


義母「あ、忘れてた!ケーキ買ってきたからこれ食べて。」



『ありがとうございます!また来てねー!』



こうして颯爽と帰っていった義母であった。



「いいお話ってなに?」


『ひみつ。』



質問:義母がやってきた

結論:たまには突然やってくるのもいいもんだ。ケーキも食べられるし。

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