第32話 庭を作りたい?

我が家には小さいお庭がある。

庭といっても今は何も手入れをしていないただの更地である。


妻の入院や出産などで庭に手を入れる暇がなかったため、長いこと放置してきたが、最近時間も取れるようになってきたため庭を作ろうかという話が出てきた。


だが、ここでも僕たち夫婦の意見が一致することはなく、どんな庭にするのか論争が始まるのである。


「私はレンガで道を作ってお花でいっぱいのお庭にしたいの。」


『僕は木々をたくさん植えて池とか作って日本庭園風の庭がいいな。』


「えー。センスないよ。」


『なんで?おしゃれだしいいじゃん。』


「わかってる?木って手入れすごい大変なんだからね。成長したら家に当たったり道路にも飛び出るし。」


『そんなのは手入れすればいいだけじゃん。僕ちゃんとやるよ?』


「ぜーったいやらないよ!去年私が入院してた時もお庭放置して雑草ぼーぼーだったでしょ?雑草取りも出来ない人が木のお手入れなんてできるわけないじゃん。」


『雑草なんて抜いてもまた生えてくるんだから枯れるまで放置しとけばいいじゃん。』


「雑草も成長したら種が飛ぶんだよ?そしたら近所にも迷惑かけるし。抜かなきゃダメなの。」


『へー。それは知らなかったわ。じゃあ今年から雑草もちゃんと抜く。だから日本庭園風にしよう。』


「日本庭園風なんて嫌だよ。うちの家と合わないし。それに池なんてダメだよ。お金すごいかかるし、お手入れもすっごい大変。水場は虫も湧くし。」


『文句ばっかり。少しは許容してくれてもいいのに。』


「お互い様ですー。」


『僕はお花でもいいと思ってるよ?でも僕のやりたいこともやらせて欲しいよ。』


「お互い譲れないものをひとつ出そうよ。それでそれに合ったお庭にしていくの。どう?」


『まぁそれでもいいか。』


「私はお花!花壇を作ってお花育てるの。」


『僕は木々がいっぱいのお庭。』


「よし。じゃあ木々があって、花壇もあるお庭ね。」


『あっ、でもいずれ犬も飼いたいから犬が走り回れる庭もいいなー。』


「えー。花壇踏まれちゃうじゃん。」


『うーん。』


「それなら私は息子が遊べるお庭もいいと思ってるよ。砂場作ったり。」


『まとまらんな。そんな広いお庭じゃないからあれもこれもはできないよ。』



車3台分くらいの広さであり、そのうち1台分は家庭菜園用の畑に使うと決まっているため、庭として使えるのは車2台分である。


「木をたくさん植えるのは諦めて欲しいな。この広さだと密になっちゃうし。」


『じゃあ車1.5台分は犬用にフェンス作って、その中に木を数本植えて、砂場を作ろう。それで残り0.5台分に花壇を作る。これでどう?』


「まぁそんな感じになるか。じゃあそれでいこう。まずは私の花壇作りからやろう。」


『いや、まずは木を植えよう。』



庭の構成は決まったものの、どこから手をつけるのか、また論争が始まったのである。



質問:庭を作りたい?

結論:どんな庭にするのか話し合ってる時が一番楽しいかも?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る