第29話 風邪ひいた

息子が風邪をひいた。


健康であるようにと願いを込めて名付けられたこの子でも普通に風邪はひく。


ただ、今回はちょっと重い。


入院することになってしまったのだ。


息子はひとりで入院できないため、親の付き添いが必要となる。ただし、このご時世なので付き添いはひとりまでと決められている。つまり、どちらか一方は仕事を休み、息子の看病をしなくてはならなくなったのだ。



入院することに決まった日曜日のお昼過ぎのこと。



「明日はちょっと仕事休めないんだけど、夫はどう?」


『僕も厳しいかも。』


「厳しいってどの程度?誰かに代われる仕事なら代わってもらって。」


『いや、明日は僕がいないと始まらない仕事だから休みにくい。』


「休めるなら本当に休んでほしい。」


『僕だって休めるなら休むつもりだけど、本当に厳しいかも。妻はどうなの?医療職だし、妻の代わりの人だっているんじゃない?』


「私の病院は人手不足過ぎてこんな急に代わってくれる人なんていないよ。」


『息子が入院したって言えば上司がなんとかしてくれるもんじゃないの?』


「いや、うちはそんなに甘くない。夫の方こそ息子が入院したならその仕事キャンセルできるでしょ?」


『僕の仕事は色んな人巻き込んでるから、僕ひとり休むとみんなの予定が変わるんだよ。』


「子どもが入院したって言えばみんな理解してくれるよきっと。」


『うーん。僕も聞いてみるけど、妻の方も聞いてみてよ。』


「わかった。」




–数分後–




『僕、明日休んでいいって上司が。』


「私も休んでいいって。」


『え。』


「どうしよ。」


『じゃあ僕休むね。』


「いや、私が休むわ。」


『なんで?妻はもともと有給休暇も少ないんだし、取っておいた方がいいよ。』


「こんな息子の一大事に仕事なんてしてられない!私が休む!」


『ダメ!僕が休む!息子が風邪で辛いのに呑気に仕事なんてしてられない!』


「譲れ!」


『やだ!』


「譲れ!」


『そっちこそ!』




「じゃあジャンケンしよう。」


『僕、ジャンケン弱いんだって。』


「もはやそれしかない。やるぞ。」


『えー。』




こうして僕はジャンケンに負け、仕事に行くハメになってしまった。


その後、2日程度で息子は元気に退院できた。


息子の側に居たいと思っているけど、仕事も疎かにできないジレンマを抱えていた僕と妻でした。



質問:風邪ひいた

結論:公私の両立はなかなか難しい。

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