第13話 ステーキを食べたい?

近所にステーキが評判のお店がある。

休みになると他県の方がそのステーキを求めてやってくるほどであった。


僕たち夫婦は付き合っている時からそのお店に通っていて、お店の裏メニューや常連しか知らないような情報などを知るまでになっていた。



〈死ぬ前に食べたいものはなに?〉


聞き飽きるほど繰り返されたこの質問に僕は自信を持って答えられる。


『あのステーキです。』と。


味は間違いない。

それはあの人気ぶりからも保証されている。


しかし、僕があそこのステーキを選ぶのには味以外にも理由がある。


それは、妻との思い出である。


付き合いたての頃に僕が連れて行ってあげて、美味しい美味しいと満面の笑みで食べてくれた妻。


結婚1周年記念で花束をサプライズで渡して、泣きながら美味しい美味しいと食べてくれた妻。


月に1回くらいのペースで通い続けた。



最近は息子がいる手前、なかなか食べに行けていないのだが、妻と僕にとってあのステーキ屋はかけがえのないものである。


だから、胸を張って言えるのだ。

僕たちが死ぬ前に食べたいものはあのステーキですと。


妻にも聞いてみよう。

ふたりの愛を確かめよう。あのステーキ屋で過ごした濃密な時間はふたりの絆へと姿を変え、僕たちの愛の結晶に・・・










「エビフライ!!」










「絶対エビフライだね。太くて長いやつ!あれ食いたい!」









「伊勢エビってエビフライに出来るのかな?一回食べてみたいなぁー!」



『伊勢エビは大きすぎてエビフライには向かないと思うよ。』






質問:ステーキを食べたい?

結論:きっと死ぬ前はガストに行く(ステーキもエビフライもあるため。)

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