直観力を鍛える大人の脳トレゲーム
下垣
問題とMONDAYと揉んでえって似てるよね?
とあるゲーム会社が脳科学の権威である鷹島教授の監修で脳を鍛えるゲームを開発した。これは今までの脳トレとは一線を画す直観力を鍛えるゲームとして注目されていた。
ここにとある男がいた。男はゲームを購入して、早速プレイしてみることにした。
「よーし。直観力を鍛える大人の脳トレを買ったぞー。どんな脳トレができるのか楽しみだな。よし、電源を投入してみよう」
『問題です。トラは英語でTiger。サルは英語でMonkey。では。カッパは英語でなんと言うでしょうか?」
「ははは。こんなの定番な問題だな。こんな簡単な問題を出して金をとろうだなんてそうはいかない。答えは、レインコートだ」
『違います』
「は? いや、合羽は英語でレインコートだろ。なに言ってんだこいつ」
『トラとサルと来て、なんでカッパだけ非生物なんですか? そこは空気読んで生物の河童を答えるべきだと私は思います』
「空気!?」
『河童は英語で、Water Impです。これが訳としては最も一般的ですかね。または、River Impでも正解にしましょう。Water Demonと略す場合もあるそうです』
「なんで河童の英訳にそんなに詳しいんだよ! 河童ガチ勢かよ。芥川龍之介もドン引きするレベルだな!」
男は呆れながらも次の問題を選択した。
『問題です。2.99999999999…… この職業はなんでしょうか?』
「これも簡単だな。2.999999は、ほぼ3。つまり、保母さんだ!」
『不正解です。保母さんという言葉は最近では使いません。性別を限定するような言い方はこの男女平等を目指している社会で使うわけないじゃないですか。今は保育士っていうんですよ』
「うわあ。正論で返されたー」
『正解は、漫画家です』
「え? なんで漫画家なん?」
『2.9999999は、約3。つまり、やくさんです。やくさんと言えば、漫画家のやくみつるさんですね』
「やくみつる!? ってか、あの人って漫画家だったんだ」
衝撃的な事実を知った男は、次の問題に臨むことにした。
『問題です。世の中にある様々な物体や事象が自己紹介をします。誰が自己紹介をしているのか当てて下さい。まずは例題から』
【私は人類の歴史になじみ深い果物です。古くは旧約聖書に登場する禁断の果実としてあてがわれることがあります。また、私が木から落ちるのを見て万有引力を発見した人もいるとかいないとか。では、私は誰でしょう】
『この問題の正解はリンゴです。このように色んなものが自己紹介をするので、その自己紹介をしているものを当てて下さい』
「よし。この程度の問題なら俺でもいけそうだ。よーしがんばるぞ」
今までがクソ問題すぎたので、例題を見てこの問題は信頼できると判断した男。問題に正解出来る気がして、やる気が出てきた。
【私には双子がいます。双子の片割れは感じることが得意で、私は物事の本質を観ることが得意です。では、私は誰でしょう】
「なんだこの問題……難しいな。わからん。ギブアップしよう」
『この問題の正解は直観です』
「まさかの概念!? こんなの答えられるか! アホか!」
『これは直観力を鍛えるゲームです。直観力がある人ならわかったはずです!』
「それは直感の領域だ! ああ、もう腹立ったな。電源切ってやろう」
『ま、待ってください。最後に1問だけ出させてください』
「なんだよ。しょうがねえな。わかった。出してみろ」
『それでは、脳科学の権威でもある私ですら解くことができない難問を出します』
「ほうほう。それは楽しみだな」
男はその言葉に胸を躍らせた。今度こそまともな問題が出てくると信じて。
『私の妻に浮気がバレました。家庭崩壊の危機です。この状況をなんとかするにはどうすればいいでしょうか。妻は離婚届に既に判を押しています。私は離婚したくないし、慰謝料も払いたくないものとします』
「知らんわ!」
直観力を鍛える大人の脳トレゲーム 下垣 @vasita
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