ガールズ・インコンプリート・ロジック

青海月

Logic

「ねーねー、急に変なコト聞くけどさー……『直観』と『直感』って、何が違うの?」


「えーっ、マジで急に変なコトじゃん……。どしたん?」


 そんな会話をしているのは、ファストフード店で寛いでいる二人の女子高校生・ユウとマリ。二人共が明るい髪色に凝ったヘアアレンジをして、少し背伸びした濃いメイクをして、制服を着崩している――一般的に、ギャルと呼ばれる風貌だ。


「マリ最近めっっっちゃ勉強してるじゃん? だから知ってるかなーて思ったんだけど」


「確かになんとなく分かるし説明出来なくもないけどー……。でも、ちゃんと説明出来る自信は無いよ? 多分言うほど勉強してないし」


「だいじょーぶ、雰囲気でだいたい分かればそれで良いから。ね?」


「しょーがないなー……。やっぱ聞くんじゃなかったーって後悔しても知らないからねー?」



 なんやかんやで説明することになったマリはルーズリーフを一枚取り出し、そこにメモをしながら語る。


「まず『直観』てのはー、要するにひらめきのコトね。パッと一瞬で出てくるモノなんだけど、ウチらが今まで勉強してきたコトや経験に基づいてるから、後からちゃんと理由の説明が出来るモノなワケ」


「ふーん……ってコトは、コッチはなぞなぞとか法則クイズとか、あーゆーのに答える時に使う能力じゃん?」


「あー、そう。それ。で『直感』の方はー、要するに『生理的に無理』とかそーゆーヤツ。上手く説明出来ないけどなんとなくそんな気がする的な感覚……って言って分かる?」


「うん、分かるよー。本能みたいなモノだから理由とか理屈とかじゃ語れないってコトだよね?」


「うんうん、そんな感じ?」


「……あっ、アレじゃね?! 変なキャラのイラストと変な単語の選択肢を見て『この生き物の名前はどれだと思いますか。以下の中から選んでください』みたいな問題に答える時に使われてる方の能力」


「そうだけど、確かにそうだけど、そーゆー問題に答えるのって心理学の実験に参加してる時くらいだからね? よく今連想出来たよね……」


「えへへっ」


「褒メテナイヨー?」



 筆記用具を片付けながらも、二人は会話を続けている。


「ユウ、今の説明で理解出来た?」


「うん、バッチリ。ありがとねー。てかマリ説明すんのめちゃくちゃ上手くね? 先生とかなれんじゃない?(マジで短期間でめちゃくちゃ話すの上手くなってるよ。ちょっと前までは単語で会話してたりしてて、言ってること意味不明だったあのマリが……)」


「えー、先生とか絶対無理だし! けど何で急にそんなコト聞いたの?」


「実はさー、現文の課題やっててちょっと訳分かんなくなっちゃって……。でもおかげでスッキリ解決したから無事今日中に終わらせられそう。マジ感謝」


「マジ? 良かったー(あれ? 現文は宿題出てなかったと思うけど……。しかも今日中に終わらすってコトは明日〆切ってコト? けど現文の授業は無くない? それにさっきの会話の中身、明らかに色んな知識が増えて賢くなってる感じだった……)」


((多分コイツ、大学行ってギャル辞めるわ))


 お互いがお互いに、直観でそう思った。

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ガールズ・インコンプリート・ロジック 青海月 @noon_moon

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