第20話 面接前日

 その後の生活だが……俺は美空の厳しい教育の中、自炊料理・ごみ出し・面接練習や企業の面接等を行っていく。


 スパルタ教育の美空は容赦が無かった……。何せ、本当の私刑が有るからだ!

 顔は可愛いのに、心はシベリア並の冷たさで有る。俺は必死に成って、生き延びるために学んだ!?


 おかげで日常生活のレベルは上がり、料理の腕に関しては飛躍的には伸びなかったが、料理のレパートリーは大分増えた。料理完成の見栄えが少し悪いので、料理投稿までには至らない。


 料理に味付けに関しては美空が指導しているから、どうしても美空が好きな味付けに成る。

 煮物だったら甘めの味付けに成り、味噌汁も白味噌と成ったりと美空好みの味付けに成る。


 また、美空は肉より魚好きらしいので魚が中心に成り、肉も鶏肉が中心に成ってしまう……

 俺は食に細かいこだわりは無いが、少しでも調理方法が変わると別の料理を作っている気分になる。


 公共プラント維持管理業務を募集している五崎ごさき重工グループから、郵送で採用試験の案内通知が無事来て、エントリーシートは通過した事に成る。

 筆記試験を魔法でどうにか出来ないかと美空に聞いた所『無理!!』と即断言されたので美空の厳しい教育指導の下、筆記試験対策を行い無事、筆記試験を通過して明日がいよいよ面接日で有る。


 その前日に美空の教育のたまものか、条件は少し悪いが在る企業から内定通知を貰うが……本命が有るので、その企業に連絡をして保留状態にして貰う。


 その日の夕食……


 験を担ぐげんをかつため、カツ丼と味噌汁を作って美空と食事を取っていると、美空がこんな事を言って来た。


「正輝」

「明日の面接……。少し助けられるかも知れない?」


「えっ、そうなの!!」

「お偉いさん達が、俺を賛美するような魔法でも使えるように成ったの!?」


「どこに、そんなうまい話が有る?」

「まぁ……でも、似たような物か…」


「美空! 早く教えてよ!!」

「その魔法!!」


「そんなに良い魔法じゃ無いよ…」

「3つ有ってね。1つ目は私が透明に成れる魔法。時間制限はもちろん無し!」

「でも、欠点が有って、透明になっている間は話せないし、人に触ってもすり抜けてしまう。壁の通り抜けは出来るけど!」


「2つ目の魔法が、1分だけ時間が巻き戻せる魔法」

「最後の3つ目の魔法が、2つ目の魔法を使った時に、あなたに1分間話し掛けられる魔法。私とだけなら、あなたも心の中で会話が出来るわ!」


 美空は淡々と言うが、有り難いような、有り難くないような魔法で有る。


「それが、どの様な助けになるの?」


「あなた、気づかないの?」

「あなたが面接で回答に失敗しても、私が側に居ればやり直しが多少は利くのよ!」

「私がアドバイスすれば、内定が貰える確率が上がるでしょ!」


 美空は呆れ返りながら言う。


(成る程なぁ……。たしかに面接は緊張の余り、言いたい事を伝えられなかったり、尺を稼ぐために余計な事を言ってしまう時が有る…)


(場数はかなり踏んできたが、それでも失敗する時は多い)

(今まで美空は、家で見守るだけだったが、明日の面接に美空が側に居れば心強いのは確かだ!)


「私も色々な求人情報見てきたけど、五崎重工グループに採用されれば、あなたの生活は建て直された物同然よ!」

「だから、頑張ってね!」


 普段の生活では見せない、和やかな顔を美空は見せる。

 俺はそれを見て心臓が『トクン』と脈打つ。


(こんな顔を見せる時も有るんだ…)

(明日の面接は頑張らなければ!!)


 美空の魔法支援を受けて、俺は面接を受ける事になった。

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