第21話 面接日 その1

 今日はいよいよ面接日で有る。

 面接が行われるのは、五崎重工グループの本社・支社では無く、実際に業務を行う公共設備内に在る事務所内で行われる。筆記試験も其処で行われた。

 自家用車で面接先に伺うのは問題無いで、美空と一緒に面接先に向かう。


「いや~、緊張するな…」


 俺はハンドルを握りながら呟く。


「正輝。今日は、私が居るのだから安心しなさいよ!」


「……そうだけど、それでもな…」


 実は昨日の夕食の後…、本当にその魔法が使えるか美空に試して貰った。


 今まで美空が唱えた魔法は、100%の確率で発動していた。

 そのため、今回新たに覚えた(?)魔法も、100%の確率だと思っていたが……


「あれ?」

「時間が戻らないわね?」

「バカでも分かる呪文なのに何で!?」


 透明になる魔法は問題なかったのだが、時間を1分間巻き戻す魔法は、時々失敗する時も有った……

 時間を巻き戻す魔法が発動しないと、美空が俺に話し掛けられる魔法も使えないので、魔法が失敗すると美空は只、俺の無様の面接場面を拝聴するだけに成ってしまう。


 更に時間を巻き戻す魔法は魔力と言うべきか、美空の体に負担が掛かるらしいので、短い時間の間に連続使用は厳しいらしい。

 面接の時間は約1時間と記して有ったので、1時間だと美空の体力から3回位が限度らしい……

 当たり前だが、魔力が底をつくと透明の魔法も解除されるので、面接会場が超大事に成るのは当たり前だ。


「正輝…。もし、あなたが面接の応えに失敗して、時間が戻らなくても恨まないでね…」

「後…、私も体力の限界が来たら、早い内に身を引くから。あくまで私は保険だと思っていて……」


「失敗しても恨まないよ…。それに滑り止めと言うか、条件は大分落ちるが1社内定を貰っているのだから…」


「でも、其処だと…あなたは満足出来ないでしょ?」


「まぁ、このご時世……。思い通りに行きたいけど、出来ないだろ…」

「それに、美空を何時までも、ここに引き留めて置くわけにも行かないだろ?」


「そりゃあ、まあ……。私も元の世界に戻りたいけど…」


「その時は、その時だ!」

「美空。そろそろ面接場所の公共設備が見えて来たから、透明に成って」


「頑張るのよ…」


 美空はそう言って、自分を“ちょん”と指をさして姿が見えなく成る。

 助手席に乗って居るはずだが、体に沿って掛けられていたシートベルトは、シートに沿うように巻き上げられていた。

 この状態では、居るのか居ないの本当に分からない。


 美空の衣類は魔法で出来ているため、裸に成らなくてもそのまま透明に成るが、これが市販の服等を着ていると服だけはそのまま残るらしい。

 服には透明に成る魔法を掛けても魔法は効かない……


「さて、横には美空が居るはずだが頑張るか!!」


 俺はそう一人喋りをして公共設備の門をくぐった……

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