第8話 突然現れた子

 ……


「起きろ!」


「……」


「起きねぇな~」


「……」


「蹴飛ばすか…!」


『ドコッ!!』


「!!!」


 俺は急に下腹部に鈍い痛みを感じる。何故だ!?


(何かにぶつけた!?)

(しかし、腹に物が当たる物なんて無いはずだが……)


 そう考えていると、俺しか居ないはずの部屋の中から声がする?


(俺、確かに家に帰って来たよな……)

(家で酒を飲んでいたはずだが…)


「まだ、起きねぇな~。もう一発蹴るか?」


『蹴る!』と言う、物騒な声に驚いて俺は飛び起きる。


「やっと、目が覚めたか……やれ、やれ」


 声の主の方に俺は目を向けると、Aラインのワンピースを着た、子ども位の女の子が立っていた!?

 小さいツインテールをゴムの代わりにリボンで結んでいる。

 顔だけで見れば、とても可愛らしい子だった。


「?」

(誰? この子)

(まさか泥棒!?)


 この家に取られる物なんて殆ど無いが、それでも泥棒は恐い。

 可愛い子だが、人の家に侵入して来るのだから、それ相応のやり手の可能性も有る!?

 わざわざ俺を起こすという事は、泥棒では無く人さらいか!?


 あいにく、俺の回りに武器は当然無い。大声を出しても良いが、人の交流が全く無いこのアパートでは、まず誰も助けに来ないだろう……

 俺は頭の中で最善の方法を考えようとすると、女の子が聞いてきた。


「おぃ、あんた!」

「名前なんて言う?」


(いきなり、あんた呼ばりされている。『おぃ、鬼○郎』では無いから!!)

(しかし……、名前を聞いているのだから答えるか?)


「えっ、俺の名前?」

「はっ、早見正輝はやみしょうき


「早見正輝……変な名前ね!」

「まぁ、良いわ!」


「そうかな?」

「普通だと思うけど…」


 俺の名前を聞く割には女の子はそう言う。

 何がしたいのだろうか?


「それよりさ……私、お腹が空いているんだけど、食べる物は無いの?」


「えっ、食べる物?」

「有るけど……」


「なら、頂戴!」

「お腹ペコペコなの!!」


 ぶっきらぼうな声の主は、食べ物を要求してくる。今時珍しい、食べ物泥棒!?

 それか、この女の子は食事をろくに貰えない、近所か何処かのネグレクトの子!?

 俺は普段使わない頭をフル回転させて、この子を解析しようとしていた……

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