第9話 食べ物泥棒!?

「ねぇ、有るんなら頂戴よ……」

「私。本当にお腹ペコペコなんだから……。最近ずっと、食べ物何て食べて無かったからさ!」


 ぶっきらぼうな声の主は、急に訳分からない事を言い出す。

『最近ずっと、食べ物何て食べて無かったからさ!』って何だそれ?

 正真正銘のネグレクトか密入国者!?


 それとも、同情を寄せるためにその様に言っているのか?

 お腹が空いて、空腹に耐えられないから、俺の部屋に忍び込んで来たのか?

 仮にそれが本当なら、見ず知らずの子でも、助けた方が良いに決まっている。子どもなら尚更だ!


「あっ、ちょっと待ってて…」

「今から用意はするけど、ラーメンは食べられる?」


「食べ物なら何でも言い!!」

「早くしてよ!!」


 ぶっきらぼうの口調から、要求する口調に変わる……。本当に何者何だ?


(細かい事は後から聞く事にして、とにかくラーメンを作るか)


「じゃあ、そこで待ってて!」

「今から用意するから」


「……」


 その子は急に黙って、テーブル近くのカーペットに腰を下ろす。本当にお腹が空いているのだろうか?

 それを見た俺は台所に向かい、ラーメンを作る準備をするが、酒を飲んでいた時の事を思い出しながら準備をする。


(……俺って、何時布団敷いて寝たんだ?)


 俺が女の子に起こされた時、俺は布団から起きた。

 あの時、布団を敷いた覚えは無い。


(たしか……、あのまま酔い潰れた様な気がするがな……)


「あっ、イテテ…」


 酔い潰れる前のシーンを思い出そうとするが、何故か急に頭痛が襲う。

 酒の飲み過ぎが原因だろう。


「あかんな…、こりゃあ、完全飲み過ぎだ!」

「でも、ラーメンを作らないと」


 俺は頭痛を我慢しながら、見知らぬ子のご飯(ラーメン)を作った。



「はい……」

「熱いから気を付けてね」


 俺はそう言いながら、インスタントラーメンが入った丼鉢を女の子の目の前に置く。


「やっと、ラーメンが来た……」

「でも、久しぶりの様な初めてのような?」


 女の子は口ではそう言っているが、顔はほころんでいた。

 やっぱり、この子はネグレクトか?

 少しぎこちない箸の使い方をしながら、ラーメンをすすると言うよりかは食べる女の子。


「はふ、はふ」

「熱い! でも、美味しい!!」

「こんな良い物ばかり食べれて、やっぱり人間は良いわね!!」


『人間……』この子は何を言っているだろう?

 この子も人間なのに?


「ズル、ズル」

「ズル、ズル」

「ズズ~~」


 女の子は美味しそうにラーメンを食べている。インスタントラーメンでこれだけ美味しく食べているのだから、本当のラーメンを食べさせたら、どう言った反応をするのだろうか?

 俺は先ほどの疑問や、この子が何者かと考えながら、女の子のラーメンを食べる姿をぼんやりと眺めていた。

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