キセキ

ペコロス

時間が止まった

緊張の瞬間スポーツ選手は

その時全てが止まったように見えると言う。



ここまでよく食らいついた。

甲子園常連校と9回裏まで

僅か1点差。

何とか決めて、甲子園に行きたい。

思えば小学1年生の時、初めてバットを

握ったあの日から

夢は甲子園だった。


毎日毎日練習した。

どんな日でも練習だけはかかさなかった。

風邪で熱があるのに素振りをしていて

怒られたほどだった。


最初の頃は素振りをすれば

手に豆ができ

それが潰れバットのグリップが血だらけになったものだ。

皮膚が硬くなりゴツゴツした手のひらを

グッと握りしめる。


目を閉じて考える。

親にも世話になった。

野球をさせてもらえる幸せ。

ドロドロになったユニフォームを

文句ひとつ言わずに洗ってくれたり

体づくりの為に栄養配分にまでこだわってもらった。

道具が古くなれば新しいのを買ってもらい。

遠征費用も出してくれた。


みんなも良くここまで諦めずに

ついて来てくれた。

2アウトランナー2.3塁

ここで打てば夢の甲子園。

俺達3年はここで打たなきゃ

二度と甲子園の夢は見れない。


自分がして来た全ての努力を信じ。

全ての人に感謝し、俺は、俺は

ここで打って甲子園へ行く!!


あっ監督!


「代打ー」




時が止まって見えた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

キセキ ペコロス @pekopekopekoros

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る