第11話 復讐者リベンは次なる復讐対象の元へ行く

~◆ビチの屋敷◇~


「コザとカイステがあの役立たずのリベンにやられたですって?」


 勇者パーティの一人ビチはとある人物から報告を受けていた。


「そうだ」


 その人物はそう一言だけ呟くと、彼女は気分悪そうにただもし黙った。


「どうした?」


「何でそんなことをこのあたし耳に入れるの?コザとカイステはもうじき勇者パーティから追い出されるような無能者じゃないの。これからあたし彼氏とバカンスに行く予定なんだけどさ」


 ラチャは勇者パーティの魔術師であり、コザ、カイステと並び称される無能者であり、無能三人衆の中では唯一の女性だ。


 容姿は本部の勇者パーティに所属のエルミアとは異なり、非常に醜い容貌をしており、歳は四十二歳であるにもかかわらず、若者のようなひらひらした服に強欲な豚のような人相に加え、赤子のようにぶくぶくした太った手には枷のような指輪がキツそうに挟まっており、キツイ香水の匂いが漂うなんと不潔で醜悪な見た目をしていた。


 彼女もまたリベンを追い出した一人であり、コザやカイステと並んで、アレックスに毎日のように追放するように進言していた。


 さらにコザやカイステよりも厄介な存在であり、とある貧しい家庭で育った婚約者を金の力で奪い、婚約破棄に追い込んでいる。


 日ごろから働きもせず、新人(特に若い女の子)に当てり散らしていた。


 そう言うことでコザとカイステと並んで、勇者パーティから追放されそうな一人であると噂されているが、彼女はそれをエルミアを始めとする若手のせいとしている。


「次の標的がお前だと思った。それだけだ」


 ビチはその発言に怒った。


「はぁー!?何でこのあたしがリベンの標的になるわけ!?それ言ったら、先にあんたを狙うでしょう!普通は!?」


 その言葉に謎の人物はため息をつきながらこう言った。


「誰に意見してんだ?豚が」


 その言葉にビチはびくっとなった。


「お前と俺の立場であれば、奴ならば格下のお前を先に狙うだろう。それにお前は奴からの恨みを買っている。奴が先にコザとカイステを狙ったのが、奇跡に等しいわ」


「ふざけてんじゃないわよ!!あいつがあたしに反抗的な態度を取っているのが悪いのよ!!だいたい、あいつは使えな…」


「俺から見ればリベンも貴様も役立たずに違いねぇ!!てめぇみたいな豚ババアがこの俺に意見すんじゃねぇぞ!!」


「ひぃ!!」


 謎の人物はビチを怒鳴りつけると、彼女は黙った。


「いいか、よく聞け!!リベンを討て。そして、コザとカイステの仇を取るんだ。そうすれば、上にはいい報告してやる。もし、できねぇなら…わかってんだろうな?」


 その言葉にビチは押し黙った。


「リベンは必ずお前の前に現れる。殺るか殺されるかだ。お前にはパーティの一員として期待している」


 謎の人物はそう言い残すと、その場から立ち去った。


 怒りに震えるビチは部屋から勢いよく飛び出すと、彼女の元で働いている事務職員たちの元へ来た。


 職員たちは彼女が入ると、部屋の中に凍り付いた雰囲気が漂った。


 彼女はずかずかと大きな足音立てながら、最近入った若い女性職員の近くに来ると、机をバンと叩いた。


「あんた仕事は?」


 その言葉に女性はびくっとなり、立て込んでいる仕事を止めた。


「えっ…今やっていますが…」


 ビチは何も言わず、彼女が終わらせた仕事書類を奪った。


 すると、突然目をかっと開き、女性にこう怒鳴りつけた。


「あんたここ間違えてんだけど!!あんた入って何か月なの!?」


 ビチは怒鳴りながら、書類をバンと力任せに叩きつけた。


 女性は恐怖でびくびくしつつも、彼女にこう答えた。


「そちらの書類ですが、先輩にも書類にミスがないか、見てもらいました。その時ミスはないと言われました」


 彼女の言う通り、書類にミスなどなかった。


 強いて言うならば、ちょっと字を間違えたから訂正印を押しているぐらいだろう。


 すると、ビチは大量の書類をビリビリ破き捨てた。


「言い訳してんじゃないわよ!!私あんたに何度も教えたはずでしょうが!?いい!!今日中にその書類を仕上げなさい!!言っておくけど、あんたみたいなただ飯食いに払う給料はないから!!その分の給料は払わないから!!」


 彼女はそう言うと、ギロリと周囲で黙ってみている人間にこう怒鳴りつけた。


「あんたらもだよ!!今日はみんな給料なしで働きなさい!!あたしは忙しいから!!」


 彼女はそう言うと、部屋から勢い出た。


 おそらく、ビチを金づるにしている彼氏の元へいくつもりだろう。


 だが、彼女は知らなかった。


 復讐の化身がそちらに向かっていることを。


~◆ザギグの街・噴水広場◇~


 噴水広場ではワニガメの大群が占拠していた。


「うおおおおおおおおおおお!!どこだ!!クソ豚女!!」


 謎の人物の言う通り、リベンはワニガメたちにビチを居場所を探らせていた。


 ワニガメたちは陸地にいるのが嫌なのか、速攻で噴水の中へと入って行った。


「何さぼってんじゃああああああああ!!てめぇら!!」


 リベンは噴水の中に腕を突っ込んだ。


 バクッ!!


 しかし、腕をまるごと食われた。


「ぐわあああああああああ!!おれの腕が!!おれの腕が!!」


「のっけからうるせぇなこのおっさんは!!」


 リベンは痛みからのたうち回ると、救世主が現れた。


「お困りのようだね」


「そ、その声は!!」


 彼の前に現れたのは恰幅のいい機械義手整備士だった。


「ハッミカーさん!!」


「誰だよ」


 ロークスの冷たい突っ込みの後、ハッミカーは笑ってこう言った。


「腕を見せなさい。新しい腕を差し上げましょう」


 彼はそう言うと、リベンに新しい腕をつけた。


 そう、ダブルドリルアームをつけてあげた。


「わっーありがとう!!ハッミカーさん!!」


 彼はそう言って、ハッミカーの腹部にドリルで掘った。


 ギュイイインンンンンンンンンン!!


「ぎゃああああああああああ!!」


 そして、ハッミカーから流れ出る大量の血はそのまま芭唖火保二刀流奥義“血の案内”が始まった。


「あら、案内板が…」


「鮮血に染まってんだろう!!少しは驚けや!!」


 血の案内はビチの場所を示した。


【う~ん、右のほう!!】


「なるほど!!わかるかぁああああああああああああああああ!!」


 血の案内は殴られると、飛沫となって飛び散った。


「えっ、やめちゃうのですか!?」


 フラムが驚くと、リベンはにやりと笑った。


「その心配はない」


 その血の臭いに引きつけられたのか、ワニガメたちは噴水から出てきた。


 そして、血を足につけると右の方へ歩き出した。


 ゴリラみたいな怪物が。


「お前が案内すんのかよ!!」


「誰もてめぇに頼んでねぇ!!」


 ゴリラみたいな怪物は頭から殴られると、割り箸を口から大量に噴き出した。

~◇ビチの屋敷◆~

 ビチのパワハラを受けた女性職員はトイレで一人で泣いていた。


「うっ…ひくっ…」


 だが、そんな彼女の前に大量の割り箸が屋敷に刺さったのが、トイレの窓から見えた。


「きゃああああああああああああ!!何!?何事なの!?」


 そして、その割り箸の下をゴリラみたいな怪物が雑コラみたいな動きで、何かから逃げている様子であった。


「ウホホホホホホホウホンッ(こんな生活もう耐え切れない!!実家に帰らせてもらうわ)!」


「何あの化け物!?考えた奴出てきなさいよ!!」


 彼女は驚くのも束の間、追撃が来た。


「待てやゴラァ!!結婚しねぇとぶち殺してやるぜ!!このストーカー化け物女郎が!!」


 次に出てきたのは2mを越える身長を持つ、筋肉ムキムキのおっさんだ。


 そいつはトゲ付きの鉄球を振り回しながら、化け物を追いかけていた。


(何なの、あのおじさん!!見た目奇抜すぎんだけど!!つーか、あの化け物メスなの!?)


 いいえ、雌雄同体です。


 基本的にはオスが多いらしい。


 そして、その後ろを地味な少年が傘を剣に見立てて遊んでいた。


「ふっ、オレのエクス傘バーが火を噴くぜ」


(滑っているわよ、少年)


 女性はロークスを冷ややかな目で見た。


「男の子って、こういうの好きだよね~」


 赤い髪の可憐な少女がロークスが傘を弄っているのを見てクスクスと笑った。


(あっ、可愛い娘もいるのね…って、スタイルが全然可愛くねぇ!!寄越しなさい!!そのむっちりとした胸と尻!!)


 だが、そうこうしている間に化け物が窓ガラスを叩き割って屋敷へ侵入した。


「きゃあ!!」


「助けて(ウホッ)!!」


「喋った!?」


 そして、次は壁をぶち破って、あの男が入ってきた。


「さて、あのババアはどこかな?」


 さぁ、仕返しの始まりだ。

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