第7話 復讐者リベンは洗脳を解く

 カイステは勇者アレックスのパーティにいた一人であり、彼もまたコザと同様にリベンを追い出そうとした人物の一人である。


 彼はパーティの説明欄で自分の経歴や人脈を過剰に演出し、ぱっと見凄い人間のように見えるが、実際には大したことがない人である。


 常に上のアレックスやレベリオに胡麻すり、下の人間はこき下ろす人間であり、かつて勇者パーティにいた頃にはリベンを徹底的に無視したり、意図的に省いたりしたのだ。


 そして、アレックスにリベンを常に追い出すように進言した一人でもある。


 自身を勇者パーティの一員であることを世界に大体的に宣伝しており、その“勇者パーティ”の肩書きを生かして、ザギグに飲食店を開いたのだ。


 しかし、当初は話題性もあって客はそれなりに来たが、その味気無さや強気の値段設定ですぐに客足は途絶え、今現在は彼を慕う手下ばかりであったのだ。


 現在は店の料理を弁当にして、それをねずみ講式で世間知らずに売っているような人間だ。


 彼は特に見下しているリベンに見下された発言をすると、ぷるぷるとところてんのように怒りで震えた。


「な…リベンの分際でその口の利き方は何なんだ…!!」


 その言葉にリベンは涼しい顔でこう答えた。


「へっ?自分のことを一流だと思っているド三流のペテン師に言っているんだけど?大丈夫?“おばあちゃん”足りてる?」


 その言葉に怒りが頂点に達した。


「おい、この礼儀知らずをわからせてやれ!!」


 その言葉と共に彼の手下がぞろぞろと出てきた。


「ほぅ?随分と手下がいるんだな?」


「次から次へとよくも!!一流は一流しか学ばないだよ!!お前みたいな三流が知ったような口をきくな!!やれ!!」


 その言葉と共に手下たちはリベンに襲い掛かった。


 彼はにやりと笑い、刀を構えた。


 その時であった。


「スピンスラッシュ!!」


 ズバッ、と言う音共に手下の一人がロークスに斬られた。


「ロークス!!」


「へんっ。ちょっと物騒過ぎねぇか、おっさん?さっきから一流だの、三流などちょっとうるさいぞ」

 その言葉にカイステは目をカッと見開き、ロークスにこう怒鳴りつけた。


「小僧風情が…ふざけた真似を!!」


「へへっ、多人数での戦いがありなら、オレも参戦させてもらうぜ!」


 ロークスはそう言うと、やんちゃそうに剣を振り回した。


「ガキが…あの小僧も仕留めろ!!」


 その言葉共にカイステの手下たちはロークスに襲い掛かった。


「うおっ!!」


 彼はその数に驚いたが、すかさずリベンが助けに入った。


「リベンのおっさん…」


 しかし、それは大きな間違えであった。


「誰がおっさんじゃああああああああああ!!」


「グボォオオオオオオオオオ!!」


 何故か、リベンに殴り飛ばされた。


「んもぅ♡この子ったら、一人倒した程度で満足してんじゃないわよ!!アタシが手本を見せてあげるわ!!芭唖火保二刀流奥義♡」


 リベンはそう言うと、手下たちに復讐の力に満ちた奥義を放った。


「“仇讐”!!」


 そう言うと、リベンは二本の刀で斬りつけ、その復讐の怨念による幻により、彼らに未来を見せた。

 そう、意識高い系と言う没落していく末路の姿を。


「ぐばぁああああ!!」


「そして、おれもぐあああああああああああああ!!」


 その攻撃は意識高い系の彼らとリベンに精神的なダメージを与えた。


 特にリベンは全身から金平糖を噴き出すほど、大ダメージを負った。


「自分も食らったああああああああ!?」


 ロークスは困惑しているが、実際はリベンも三十八歳と言う歳で結婚もしないで、復讐とかいう中二病の力に目覚めた現実があまりにもきつかったのだろう。


 周囲から見れば、完全にやばい奴だし。


 そのダメージはカイステの部下のダメージを遥かに上回った。


「ぐっ…凄ざましい威力だ…このおれまで食らった。だが、次で貴様らを意識低い系に変えてやる!!食らえ、芭唖火保二刀流奥義…」


 彼は再び奥義を放った。


「“報辱”!!」


 彼はある物を差し伸べた。


 農家や鍛冶屋で物作りによる、地元で愛されると言う素晴らしい道を。


「うんにゃ、やっぱ自分で作った野菜は旨いべ」


「鍛冶屋で道具作ってのはいいな~、まず手に職あるってええな~」


 カイステの部下たちはリベンの攻撃によって、地元の良さに目覚めた。


「何で!?」


「「「「今までお世話になりました~」」」」


 カイステの部下たちはそう言うと、彼らは故郷に帰っていった。


 ただ一人除いては…。


 その人物は手に不採用通知を持っていた。


 そう、リベンだ。


「なんでじゃああああああああああああ!!」


「グボォオオオオオオオオオ!」


 そこには親切にも不採用理由が書いてあった。


 “きもいから”と。


「何が社会じゃああああああああああ!!」


 そう言いながら、カイステの胸倉を掴み、何発もビンタした。


「うおおおおおおおおおおお!ちくしょー、世間が厳しすぎるんじゃああああああああああ!!」


 バキィッ!


 ボカァ!


「ぐわあああああああああ!」


 リベンはカイステに八つ当たりを食らわせた。


「くっ…三流の分際で!よくもこの一流の俺を殴ったな!」


「ふん、自分を客観的に物差しで測れない詐欺師でしかない貴様に本当の自分って奴を思い知らせてやるぜ」


 彼はそう言うと、二本の刀を突き付けた。


「お前も見ろよ、三十八歳」


「行くぞ!!芭唖火保二刀流奥義“仇讐”!!」


「あっ…おいっ!その技は…」


 リベンは二本の刀による猛襲をカイステに浴びせた。


 だが、その攻撃はひらりとかわされてしまった。


「ふんっ、一度見た技が通用するとでも!?」


「なっ…!!」


 このままでは三十八歳で中二病と言う厳しい現実を見ることにしまう。


 そうなれば、リベンはその厳しい現実に耐え切れず死んでしまうだろう。


「ぐっ…『えっ、リベンさん三十八歳にもなって、復讐の力?その歳で中二病とかないわー。きんもー☆』だって?ぐっ…ぐあああああああああああああ!!」


 リベンは合コンで言われた醜女にそう言われ、その厳しい現実を受けそうになった。


 なお、彼は合コンに行くことは未来永劫ない。


「はっはっはっ!!自爆しやがった!!」


「おっさん!!」


 だが、彼はその厳しい現実を手に取ってみせた。


「と見せかけておいて、オラァ!!」


 そして、そのままカイステの口に押し込んだ。


「むごぉっ!!」


「隙あり!!今度こそ食らえ!!“怨恨斬”!」


 ザシュっ!!


 一瞬の隙を突かれたカイステはまんまと彼に斬られてしまった。


 負の幻が彼を襲い掛かろうとしていた。

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