第5話 復讐者リベンは後輩と初対面する

 リベンに倒されたコザは周囲をゴリラみたいな怪物の大群に囲まれていた。


 “復讐の絶刃”を受けたコザの前にはゴリラみたいな怪物の着ぐるみが置かれており、新たなる仲間の生み出そうとしていたのだ。


「ウホウホウホウホウホウホオオオオオオッ!!アッーイヤー!アッーイヤー!アッーイヤー!」


「うるせっー!!」


 ボギャアアアア!!


 リベンはゴリラみたいな怪物を思いっきりぶん殴った。


「おれはまだコザに復讐完了してねぇんだ!!水を差す真似をしてんじゃねぇ!!」


「ムボボォオオ!!」


 ゴリラみたいな怪物はリベンに殴り飛ばされた。


「大丈夫か、コザ!!」


「ぐっ…」


「まだ息の根があったかああああああああああああああああ!!」


 リベンは思いっきりコザの腹をぶん殴った。


「ええっー!!?」


「この雑魚助がぁああああああ!!よくも、おれを追放したな!!食らうがいい!!芭唖火保二刀流奥義“全財産譲渡”!!」


 ザシュッ!!


「ぐわあああああああああっ!!」


「何だ!?この強引極まりない技!?こんなのが奥義かよ!?」


 リベンはコザの指を切断し、コザが持ちうる全ての財産を譲る権利書に血の印を押すと、近くにいた山羊に渡した。


「お願いしますぅうううううう!!」


 しかし、山羊は権利書を食べてしまった。


「何してんだ!!てめぇ!!」


「んめぇえええええええええええええ!!」


 ズザザザザザザザザザザザッ。


 しかし、山羊はリベンの攻撃を堪えた。


「なかなかやるな…お前…」


「めぇ」


「さっきのは耐えたようだが、次のはどうかな?」


 リベンは二本の刀を引き抜くと、山羊に飛び掛かった。


「ジンギスカンしてやるぅううううううううう!!」


 リベンと山羊の勝負は一瞬で着いた。


 勝者は山羊であった。


「うおおおおお!!負けてる!!」


 ロークスが突っ込みを入れると同時に何者かが部屋に入ってきた。


「お話通りですね、リベン・アヴェンジヤン」


 部屋に入ってきたのは二十代ぐらいであろう妙齢の美女であった


 彼女は流れるような青い髪にグラマラスな肢体をしており、それをアピールするかのような露出度が高い衣装を身にまとっていた。


 顔立ちは狐のように細い目が特徴的であり、長い耳をしていることから種族はエルフであると、推測ができた。


 リベンはコザに八つ当たりのビンタを止めると、彼をゴリラみたいな怪物の方へ放り投げて、彼女を見た。


「誰だ?」


「はい、勇者アレックス様の使者として参りました。半年前に『ブレイブリー・イグニート』の一人に認められた者です。新参者のエルミアです。はじめまして、リベン・アヴェンジヤン先輩」


 その言葉にリベンは怪訝な顔をした。


「ほう、人を追放ばかりしている勇者パーティが新入りを雇ったのか」


「追放なんてとんでもない。アレックス様はとても賢い方ですわ。あなたやそこの転がっているゴミ屑のような無能者を追い出し、私を始めとする優秀な者をどんどん仲間に入れているだけ。あの方は人の扱いが長けているのですわ」


「ふん、アレックスのイエスマンか。なるほど、あの男が気に入るだけはある」


 その言葉にエルミアは可笑しそうに笑った。


「ふふっ、面白い方ですわ。気に入りました。どうですか、私の下僕になりませんか?そこの無能者はこれより追放します。これであなたが恨みのある人間は勇者パーティにはいません。どうでしょうか、もぐもぐ」


 エルミアはそう言うと、近くにいたゴリラみたいな怪物のチャックからメロンパンを取り出してそれをたべながらそう言った。


「ウホッ♡」


 ゴリラみたいな怪物は何故か嬉しそうにしている。


「ふん、断る」


「あら、それは何故?あっ、もうちょっと下の方をお願い」


 ゴリラみたいな怪物に肩を揉まれながら、彼女はそう言った。


「おれが恨んでいるのはそこに転がっているコザ一人ではない。かつておれとパーティを組んでいたアレックス筆頭とした十二人のメンバーだ。そいつらに加担するお前も同じ復讐対象だ」


「んあっ…もうちょっと…右お願い…そこ気持ちいいの」


 エルミアはゴリラみたいな怪物の健全なマッサージが相当気持ちいいのか、リベンの言葉が届かないぐらい恍惚の表情で悶えていた。


「全然聞いてねぇよ、この人!!つーか、いつの間にゴリラみたいな怪物にマッサージされてんの?」


「エロい表情すんなやああああああああああああああ!!」

 ドバギャアッ!


「ええっー!?何でオレ!?」


 何故か、リベンは突っ込みを入れたロークスをぶん殴った。


「あぁ…そ、そうなのね。残念だわ。せっかく、勇者パーティに戻れるきっかけを作ってあげたのに…。あっ、もういいわ。マッサージ」


 ゴリラみたいな怪物はエルミアにそう言われると、健全なマッサージをやめた。


 彼女はゴリラみたいな怪物の背中にエレガントに座った。


「いつ間にかその変な化け物を手懐けているし!上品に座っているつもりなのに、座っているものが変な化け物だからしまらねぇ!」


 ロークスは突っ込みに嫌気がさしたのか、エルミアはじろっと彼を見た。


「あら、騒々しいわね坊や。私に何か用かしら?」


 その言葉にロークスは口を慎んだ。


「ふぅ、私はコザ用があってきたのよ。あんたみたいな虫けらに用があってきたわけじゃないの。ねぇ、ジャン=コネール=ゼネラル=シャカシャカ=ポテト=コンソメ=アジ=テイカ=ドナル=ポコポコ=コンスタンティノープル=リメイク=ゴリラゴリア36号」


 そう言って、ゴリラみたいな怪物に同調を求めた。


――名前長っ!?


「ウホッ(えっ、何その変な名前は?俺ジョンって言うんだけど)」


「いい子ね。ジャン=コネール=ゼネラル=シャカシャカ=ポテト=コンソメ=アジ=テイカ=ドナル=ポコポコ=コンスタンティノープル=リメイク=ゴリラゴリア36号。ああ、そうだ。坊やのおかげで思い出したわ。コザ!」


 エルミアはコザを思いっきり呼んだ。


「アレックス様よりお言葉をこう賜りました。『コザ。お前のような使えない男はこの勇者パーティには不必要だ。即刻、我ら勇者パーティの前から消えろ。目障りだ』とのことです」


 その言葉を聞いたコザは血を吐きつつも、驚きながらこう返した。


「ば、馬鹿な…この俺が追放だと…」


「あなたの任である聖女捜索は私が引き継ぎます。貴方はすぐにやりたいことでもやっていなさい。最も、自分の都合でこのパーティを抜けたことにしますが。一刻もこの屋敷から立ち去るように」


「ふざけるな!この俺が追放だと!あの時、使えねぇリベンを追い出せたのは、俺がいたからだろうが!!」


 コザがそう言ってしまうと、近くにいたリベンに斬られた。


「この減らず口がぁああああああああああああああああ!!」


「ぐあああああああああああああ!!」


 その様子を見ると、エルミアはため息を付きながらこう言った。


「あなたは現実を受け入れられないお子様なのかしら?結果はそこのリベン先輩に負けている段階で決まっているのよ」


「ぐっ…頼む、もう一度だ!もう一度俺にチャンスをくれ!」


 コザは必死に懇願したが、エルミアは首を振った。



「私にその権限はないわ。私はあくまでお言葉をお伝えしたまで。それでは、この屋敷は後日解体の予定ですので…あ、そうだ」


 エルミアは何かを思い出したかのように、リベンの方を向いた。


「このキモカワイイ魔物頂いてよろしくて?

 その言葉にリベンはドン引き気味にこう答えた。


「えっ、何この娘。その化け物可愛いって思ってるの?ないわー」


「私はこのキモカワイイ魔物が気に入りましたの。あなたよりも飼い慣らせる自信はありますわ」


「こいつ感性おかしい…ど、どうぞ」


 リベンが引き気味にそう言うと、彼女は嬉しそうにこう言った。


「本当ですか!やったー!…コホン、思わずテンションが上がりすぎてしまいました。それではこれで…行きますよ、ジャン=コネール=ゼネラル=シャカシャカ=ポテト=コンソメ=アジ=テイカ=ドナル=ポコポコ=コンスタンティノープル=リメイク=ゴリラゴリア36号」


「ウホッ」


 彼女はそう言うと、ゴリラみたいな怪物に乗ったまま去った。


「うわぁ…変な奴出たよ…」


 リベンは軽く引き気味だが、納得いかない奴らもいた。


「ウホッ!ウホホホホッ!オオオオオオオオオオッ!」


 選ばれなかった他のゴリラみたいな怪物はリベンに抗議した。


 おそらく、ムキムキのおっさんよりも綺麗なエルフのお姉さん方がいいみたいだ。


「うるせぇー!!」


 ドバギャア!


 リベンはゴリラみたいな怪物をぶっ飛ばした。


「コザ」


 彼は倒れているコザを呼び掛けた。


「・・・・・・・・・・・」


 コザは何も言わなかった。


「わかっただろう、お前は使えない人間なんだ。それをお前は受け入れられず、かうて自分より格下だと思っていたおれに当たっていたんだ。だが、お前はその格下のおれに負けたんだ」


「…てめぇさえ、てめぇさえいなければ!!」


 そう言って、コザは起き上がり、最後の気力を振り絞り、リベンに立ち向かった。


「コザ!!」


 彼は心配そうに駆け寄った。


 そして、


「甘えるなあああああああああああああ!!」


と一太刀でコザを真っ二つにした。


 この一撃でコザは完全に意識を失った。


「コザ、貴様は自分の無能さを地獄で永遠に悔いていろ」


 彼はそう言うと、ロークスの方を向きこう言った。


「おれの復讐に付き合わせて悪いな。この後、飯に行くか?おれの奢りで」


 その一言にロークスはため息を付いて、こう断った。


「いや、いいよ。めっちゃくちゃなあんたと一緒だと大変そうだし」


「てめぇに選択肢はねぇ!!」


「グボォォ!!」


 リベンはロークスをぶん殴ると、そのまま足を掴み、ロープで縛って無理やり連行した。


「うおおおおおおおおおおお!!少し丁寧扱え!!」


 こうして、奇妙なタッグは料亭へと向かった。

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