第3話 復讐者リベン、憎きあいつと会う

「んもうっ、どーして一緒に来てくれないのよ♡たかしぃ…」


「気持ち悪いから止めてくれませんか。その気持ち悪いオネエ言葉を」


 リベンはかつて同じパーティにいたコザの配下オイカワを倒し、その時彼にパーティを追い出されたロークスを仲間に加えるべく説得していた。


「たかしぃ~♡あなたはあのパーティに追い出されて悔しくないの?」


「それは…確かに悔しいけど…」


 彼は冒険者になるためにこの町にやってきた。


 コザのパーティに入ったのは、少しでも勇者のように強い冒険者になりたいと思ったからだ。


 ところがいざ入ってみたら、大した任を与えられず、ただひたすら暇を潰しているだけだった。


 仕事がないと駆け寄っても、彼らの口から吐き出されるのは罵言雑言だった。


 それでも張り切って自分の家を出て、冒険者になったからには、我慢してきたのであった。


 だが、この日何の前触れもなく、パーティを追い出されたのだった。


 彼は今でも忘れられなかった。


 コザのあの一言が。


『てめぇみてぇな役立たず、今すぐクビにしてやりてぇよ』


 彼はそれを思い出すと、強く拳を握りしめた。


――いつかあいつらを見返してやる


 しかし、そう思いつつも今は力がない。


――とは言ったものの…


 彼はため息を付き、ぐるっと後ろ向いた。


 そこでは寿司屋を営んでいるリベンがゴリラみたいな怪物と成り下がったオイカワに拷問を仕掛けていた。


「ガリ!ガリ!ガリ!ガリ!どうだ!おれの寿司は旨いか!」


「ウホッ…」


 だが、そんなガリばかり出されても食べるわけがない。


「好き嫌いはよくねぇええええええええええ!」


「ウホゴォォォオオオオオオオオオオッ!」

 ザシュッ!プシャーッ!


 リベンが化け物を斬りつけると、見事な血しぶきが上がった。


「うおおおおおおおっ!着ぐるみごと斬った!」


 鮮血が地面に染まると、血が文字になった。


「これぞ芭唖火保二刀流奥義“血の案内”。どれ何々…」


 リベンはその血を読むと、こう書かれていた。


【ポーン。芭唖火保二刀流奥義“血の案内”が発動されました。コザの屋敷、この先右の通路を通るルートです。実際の交通規制に従って走行してください】


「わかった!」


 バキャァー!


「ウボォオオ!」


 リベンは化け物を意味もなく殴った。


――あんな変な奴と一緒には行動したくない…もし、オレもあいつの怒りを買えば、あの変な化け物に姿を変えさせられるかもしれない…そういえば、あれ着ぐるみだよな?


 彼はそう思い、元オイカワである化け物の背中のチャックを取ろうとした。


「ウホッ♡」


 化け物は背中をチャックを触れられると、少し恥じらいを見せ、頬を赤く染めた。たぶん。


 正直キモイ。


「何でちょっと嬉しそうなんだよ!開けるぞ!!」


 彼は意を決してチャックを下ろした。


 すると、中には大量のアンパンが詰まっていた。


「ぬおおおおおおおおおおおお!なんじゃあこれは!?中のオイカワはどこ行ったんだ!?」


 彼があまりの出来事に驚くと、リベンがこちらに気づいた。


「おい!何やってんだ、ジョン!」


「やべっ、気づかれた」


 彼は思いっきりロークスを弾け飛ばすと、化け物チャックを閉めた。


「今日のおれの昼飯だぞ!独り占めしようなんてそうはいかねぇ!」


「知るか!中にいたオイカワどこ行ったんだよ!!この中にいたんじゃねぇのか!?」


「え?ああ、さっきの奴か?まぁ…元気にしてんじゃねぇの?」


 超アバウトな答えにロークスは絶句した。


――こいつ…狂ってやがる…


 リベンの態度に若干の恐怖を覚えた彼だが、ロークスのその様子に彼はこう言った。


「ところでお前はいつまでここにいるんだ?」


「え、ああ。そうだな、オレはここで…」


 リベンの一言でロークスはその場から立ち去ろうとした。


「待て!!」


 立ち去ろうとするロークスは彼を呼び止めた。


「今度は何だ?」


「あやとーり♡」


 リベンはあやとりで流れ星を作ってみせた。


「そうか、そうかできたのか…」


「えへへ、おれできたよ。流れ星」


 和やかな雰囲気の中、ロークスは剣を抜いた。


「オラァ!!」


「ぐばぁああああ!」


 そして、リベンを思いっきり斬りつけた。


「えっ弱っ!」


「くっ、見事な力だ…おれにダメージ負わせるとは…」


 ロークスに斬られたリベンは地面に突っ伏しながら、彼をにそう言った。


「めっちゃ隙だらけだったじゃないっすか」


「お前の力はコザ如きでは扱いきれないだろう…あのアレックスでもだ…ひょっとしたら、もしかしたらお前は最強の冒険者になれるかもしれない…お前名前を何というんだ?」


「ロークス…ロークスだ」


「ロークスか…いい名前だ。これから行く敵はおれ一人ではどうにもならない。頼む、おれに力を貸してくれ」


 彼は体から血を流しながら、必死に頼んだ。


 ロークスは考えた。


 こんなイかれた奴と旅して、命あるだろうか。


 そう考えると判断が鈍る。


「判断が遅い!」


「グボォォ!」


 リベンは思いっきりロークスを殴った。


「すぐに物事を決めなければ、自分や妹、周りの人の命を失う危険がある。そんなこともわからないのか?てめぇの…」


 彼はそう言うと、彼の足を縄で縛った。


「てめぇの意志なんて聞いてねぇ!!」


「こいつまじで好き勝手だ!!」


 彼はそう言うと、血の案内に従って、コザの屋敷へ向かった。


 ロークスを無理やり連れて行って…。


~◆コザの屋敷◇~

冒険者の街ザギグから離れた場所に勇者パーティの一人であるコザが住んでいた。


 勇者パーティは伝説の迷宮“レジェンド”到達後、各地に散らばり、その権威を世界中に知らしめる為に大きなギルド組織と化したのだ。


 ところが、リベン離脱後はどうも思うようにはいかない様子であった。


 大きなギルドになったにも関わらず、思うように上手く行かない勇者パーティはかつてリベンを追放したように、また別の人間を追放しようとしていた。


 その話題となると真っ先に話題に上がるのはコザだ。


 コザは元々能力が低いにも関わらず、上にはこびへつらい、下には理不尽に当たり散らすこともあり、大変人気がないことも相まい、今度は彼がパーティ追放の候補に挙がっていた。


 そんなわけでコザはここ最近非常に苛立っていた。


「クソッ、この優秀な俺が勇者パーティを追放だと…ふざけやがって…!」


 彼は日ごろからアレックスに詰め寄られており、かつてリベンが受けていたパワハラをそのまま彼に行ったのだ。


「ふざけやがって…あの使えねぇリベンを追い出したのは誰だとおかげだと思っているんだ!!」


 彼は思いっきり壁を殴ったその時だった。


「ご報告いたします!」


「何だ!?つまらねぇことだったら、ぶっ殺すぞ!!」


「ひっ…そ、それがオイカワ一派が壊滅させられたそうです!」


「けっ!オイカワも使えねぇ野郎だな…それで?」


「はっ!オイカワ一派を壊滅させたのは、どうやら二本の刀を使う復讐者だそうです!」


 その言葉にオイカワは思わずコップを落とすほどに驚いた。


「ば、馬鹿な!あいつは死んだはずじゃねぇのか!」


「はっ!さらにその人物はオイカワ一派が最近雇った新人の冒険者をスカウトしたそうです」


 その言葉にオイカワは完全に激怒した。


「ふざけたこと抜かしてんじゃねぇぞ!ボケガァア!」


「ひぃいいいいいいいい!」


「いいか、このエリアのリーダーはこの俺だ!誰がてめぇみたいな役立たずを雇ってやっている思っている!」


 彼は椅子を蹴り飛ばすと、配下に詰め寄り、胸倉を掴んだ。


「てめぇみたいなぁ!無能がいるから、俺が本部にグチグチ嫌味言われるんだろうがぁ!」


 彼はそう言うと、部下の顔面を殴ろうとした。


 その時だった。


「報告!報告!」


「何だ!?てめぇも殴られてぇのか!!」


「いえ、殴られたくないです!屋敷に侵入者が入ったそうです!」


「何ぃ!!どこのどいつだ!!」


 その謎の侵入者はすぐに姿を現した。


「あっ、こんにちは!お宅が著作権侵害しているという追放が入りました!!【##規制##】です!ぶち殺しに参りました!!」


 部屋に入ってきたのは、とても見せられない服装のリベンがコザの前に現れた。


「て、てめぇは!!リベン!!」


 コザはリベンの姿を見ると、部下を投げ飛ばしてそう驚いた。


 だが、リベンはこう答えた。


「いいえ、違います」


「は!てめぇ相変わらずだな!!」


「本当なんだって…信じてくれ」


「へっ、相変わらずむかつく野郎だぜ…その顔を見ていると、ぶち殺したくなるぜ…んで、隣の変な格好をしている奴はてめぇの連れか?」


 リベンの隣にいるロークスはその言葉にこう答えた。


「Excume me?Are you by any chance,wimp?」


「頭おかしぃじゃねぇのか、てめぇ?」



 その様子を見ていたリベンは冷たくこう言った。


「それ滑っているぞ」


 ロークスはその一言にショックを受けた。


「少し頑張ったのに…」


 そんな彼を尻目にリベンはコザをギロリと睨みつけてこう言い放った。


「コザ。てめぇに受けた屈辱を…自由の身となった今この“怨”の一文字しかないこの復讐者“リベン・アヴェンジヤン”がお前に地獄さえも生ぬるい苦しみを味わいさせに来てやったぜ」


「面白れぇ!やってろみろよ、役立たず!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る