第2話 復讐者リベンは出会う
リベンが勇者パーティを追放されて、一年が経過した。
冒険者たちの街“ザギグ”ではとある新人の冒険者がこの町に来たと言う噂が流れていた。
ただの冒険者ではない。
小国セレナーデ王家の王女がこの町にやってきているのだ。
セレナーデ王家の王女は代々“召喚魔法”の力に目覚めており、万物の精霊を自在に呼び出せる力を持っていると言われ、レジェンドに到達した勇者パーティも彼女を狙うべくこの町にやってきていたのだ。
この任務に任されたのはバーバリアンのコザであり、彼はこの町で最も豪華な屋敷にて部下に王女を探させていた。
もちろん、彼女を狙うのは他のパーティも一緒であった。
「出てけ!てめぇみてぇな役立たずはいらねぇよ!」
コザの部下であるオイカワは三か月前に雇ったばかりの新人冒険者をパーティから追い出していた。
「な、何をするんですか!いきなり!」
パーティから追い出された少年は抗議の声を上げた。
彼の名前はロークスと言い、ずっと冒険者になることを夢見た少年だ。
ロークスは17歳と年若く、茶色い髪にやんちゃそうな顔立ちが特徴的なウォーリアーであり、青を基調とした衣服を着ていた。
背中の剣は安物であり、まだ新品である様子から新人の冒険者であるように感じられた。
オイカワは彼を見下すと、意地悪そうにこう言った。
「俺たちはなぁ、王女を探すことが仕事なんだ!新人の使えねぇ冒険者なんて面倒見ている余裕なんてねぇんだよ!」
「ちょっと待ってください!あんたパーティ募集の時に“未経験歓迎”とか書いてあったじゃないか!こんなの納得できない!」
ロークスがそう言うと、オイカワはブチ切れた。
「あぁん?三か月もてめぇみてぇな能無しを飼育してやったんだ!文句あるならやるのか、クソガキ!言っておくが、てめぇみてぇな新人が暴れたところで何も変わりはしねぇよ」
その言葉にロークスは歯を食いしばった。
その時だった。
「すみません、この辺りでパーティ追放している馬鹿がいると聞いたんですが」
「あぁん?部外者は引っ込んで…」
オイカワはその姿を見て、固まった。
そいつはかつて自身の雇い主が追い出した男の特徴とよく似ていたからだ。
その男は2mを超える筋肉モリモリマッチョマンの変態で、ナックルウォーキングで移動するゴリラみたいな謎のシュールな化け物どもを従え、その姿を現した。
リベン・アヴェンジヤンが姿を現したのだ。
「て…てめぇはもしやコザの兄貴が言っていた“リベン・アヴェンジヤン”か!?」
「えっ、違うけど」
その一言で白けた雰囲気が漂った。
「えっと、貴方は…?」
ロークスはリベンに名を尋ねた。
「コザの元カレ“リベン・アヴェンジヤン”だ」
「えっ!?さっき違うって…」
「いいえ、ケフィアです」
「意味が分からねぇよ、何言ってんだこいつ!!」
ロークスは彼に突っ込みをすると、その様子を見ていたオイカワは笑い出した。
「ハハハハハ、てめぇには漫才師の方が向いてんじゃねぇのか!お似合いだぜ、その変態筋肉と一緒にいた方がいいじゃねぇのか!!知っているぜ、こいつコザの兄貴にパーティ追い出された無能野郎だろ!!?」
その一言にリベンは怒りの琴線に触れた。
「ほう、お前このおれとやると言うのか?」
「へぇっ、俺と戦うと言うのか?言っておくが、冒険者同士の私的な戦いは街中で禁止されているぜ。憲兵に見つかれば、お前は即逮捕だぜ?無能君♪」
「関係ない、おれが法律だ」
「へっ?」
その一言に呆気を取られた隙にオイカワにリベンは特攻した。
その隙はまず彼は百発ぐらいのとりあえずラッシュ突きをお見舞いした。
ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!
「ぶべらぁ!!」
十分文字数を稼いだところで今度は彼の頭を掴み、地面に顔を押し当て、思いきり引きずった。
ズザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザッ!
「ガッ…アガァツ…」
顔の形が変わるぐらい怪力任せに地面を引きずった後、文字数を稼げたことに満足したのか、今度はトイレに彼を運んだ。
洗面台に水をたっぷり貯めると、リベンはオイカワの顔を水に押し付けた。
「汚ねぇ面だな~!たっぷり綺麗にしてやるぜ~」
「あっぶくぶく、ゴバペリ!
」
オイカワが溺死する寸前にリベンは洗面台から顔を上げた。
「アッ…はぁはぁ、は、離せ…」
「息継ぎ完了!まだまだ!」
彼は冷酷にもう一度洗面台に顔を押し付けた。
「こんなんじゃあ!立派な水泳選手になれねぇぞ!!」
「どう見てもただの拷問だろこれ!!つーか、ここどこだよ!」
凄惨な練習風景(拷問)に思わずロークスはそう突っ込んでしまった。
「よーし、息継ぎの練習終わり!さぁ、次は…」
彼はオイカワの頭を掴み、思いっきりある場所へと放り投げた。
そこは大きな水がたっぷり溜まっている場所だった。
「ゲホッ、助かった…。って!!なんだここは!?」
オイカワが息継ぎの練習から解放されると、辺りを見渡した。
すると、大きなヒレのシルエットが現れた。
「サ、サメか?ここは海か!!?」
「市民プールだ!!そして、お前を追っているのはサメではない!!人食いツノダシじゃあ!!」
彼がそう言うと、プールの中から巨大なナンヨウハギが現れた。
「ナンヨウハギじゃねぇかよ!!どこから出てきたんだよ!!」
ナンヨウハギは冷たい瞳でオイカワを見ると、猛スピードで追いかけ始めた。
「う、うわあああああああああああああっ、助けてくれぇえええええええええ!!」
オイカワは急いでプールサイドまで必死に泳いだ。
人食いナンヨウハギは猛スピードでオイカワを追った。
幸運にもオイカワはナンヨウハギに食べられる前にプールサイドへ着くことができた。
「ハァハァ、くそっ何だって言うんだ…」
しかし、岸で待っていたのは鬼コーチリベンであった。
「修行が足りん!!」
彼は冷酷にオイカワを見下すと、彼の頭を掴んで再びプールへ投げ捨てた。
「ブバァッ!何なんだ、あいつ!!めっちゃくちゃだ…はっ!!」
ふっと気づくと、後ろに人食いナンヨウハギがいた。
ナンヨウハギは何も言わずに彼を見逃した。
「な、なんだ…」
しかし、それをリベンは許さなかった。
「てめぇ!また餌を残したな!!」
リベンは口から破壊光線でナンヨウハギごとオイカワを吹き飛ばした。
ドゴォン!!
上手に焼けました♡
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!!」
文字数を十分稼げなかったので、イラっと来たリベンは二本の刀を引き抜いた。
「お前みたいに弱い者を虐める弛んだ根性した奴には地獄すら生ぬるい!この“復讐者”たるこのおれが世界に代わって成敗してやる!!行くぞ!!」
彼は二本の刀でオイカワに飛び掛かった。
「く、来るのか!?あの二刀の剣術が!!」
「うおおおおおおおおおおっ!!」
彼は二本の刀で拷問で弱り切ったオイカワを斬った。
「芭唖火保二刀流奥義!“復讐の絶刃”」
「ぐあああああああああああああああっ!案外普通の技名だ!!」
オイカワは斬られた個所がどす黒く染まった。
「こ、これは!?何だ!!」
「それはおれの復讐エネルギーだ。これを受けると、変なゴリラみたいな怪物になる」
「な…それだけは嫌だ!頼む、助けてくれ!そ、そうだ!コザの親分の居場所を教えてやる!あんたはコザの親分を憎んでいる!あいつに復讐させる機会をやるよ!だから…」
「駄目だ」
その一言でオイカワは発狂した。
「うわあああああああああああああっ!嫌だ、あんな不細工な怪物になりたくねぇええええええええええええええ!」
新しい仲間が増えることにゴリラみたいな怪物たちはナックルウォーキングをしながら、オイカワを囲んだ。
「ウホホホッ!ウホウホウホウホウホウホオオオオオオッ!!アッーイヤー!アッーイヤー!アッーイヤー!アッーイヤー!」
ゴリラみたいな怪物は狂喜乱舞しながら、新しい仲間の誕生を祝った。
そして、新たなる仲間になる彼にプレゼントを贈った。
ゴリラみたいな怪物の着ぐるみだ。
「えっー!!自分でなるのかよ!!」
「ウホウホウホウホウホウホ!!アッーイヤー!アッーイヤー!アッーイヤー!ウホッー!!」
どうやら、着ぐるみを着ないと見逃してくれないそうだ。
彼らは早く着ないオイカワにイラついてきたのか、拳を構えた。
この拳に貫かれたら、ひとたまりもないだろう。
「わかった…着ればいいんだろ!」
彼はゴリラみたいな怪物の着ぐるみを着た。
おや?オイカワの様子が…?
おめでとう!オイカワはゴリラみたいな怪物に進化した!
ゴリラみたいな怪物は鳴き声を覚えたいようだ…。
「いらねぇ!!」
リベンはそう言って、ゴリラみたいな怪物(元オイカワ)を思いっきりぶん殴った。
「ふん、こんな代替品じゃあおれの復讐心を満たせねぇ。やはり、アレックス…お前たちに復讐しなければ、おれは復讐から解放されねぇ…」
その凄惨な光景を見ていたロークスはただ隠れて見ているしかできなかった。
「す…すげぇ…」
「おい、そこの小僧」
その一言に思わずビクッとなった。
――まずい、あの変な化け物にされる!!
「お前、見どころありそうだな。どうだ、おれと組まないか?」
「えっ!?嫌だ」
思わぬ一言にロークスは反射的にこう答えてしまった。
「えーっ、ショック!」
その一言にリベンはショックを受けた。
こうして、二人の追放されし冒険者が出会った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます