18
暗い気持ちもまま、役所前に到着した。
「よし。家族になりに行くか!」
祐也の震えた声で我に返る。
この紙を出せば私は星野になる。
手と足がロボットのようなぎこちなさで歩く二人は役所へ入っていった。
「10番の方、窓口へどうぞ」
私たちの番号は12番。
10番の人はとっても疲れ切った女性だった。
戸籍かには幸せそうな男女、新生児を抱えた夫婦。
そして暗く悲しみの表情をした人。
私は初めて、同じ課で生死や人生を報告するのだと知った。
「離婚届の提出ですね。確認いたします。」
うっすら聞こえた声。
この先、ずっと一緒にいたい。
きっとこの人も思っていたのだろう。
そして私もその一人。
茶色の紙を見つめ、幸せと不安で顔が強張っていた。
「そろそろ呼ばれるね。陽花大丈夫か?お腹痛い?」
「ううん。この紙一つで人生が変わると思ったらちょっと怖くなっちゃった。」
「そうだな。俺たち本当に家族になるんだな。これから先、お腹の子も含めて家族なんだよな。俺、頑張る。陽花も一緒に頑張ってくれるか?」
「もちろん。この子と3人、幸せになろうね。」
そんな話をしていたら12番が呼ばれていた。
緊張のせいか、決められた作業のせいか。
気が付いたら証明書の発行を待っていた。
「なんか思ってたより早くておどろいたな!」
「ねー。私、緊張しすぎて何したか覚えてないや」
「処理されたってことは陽花、星野になったね!いやーこんな簡単に名前変わっちゃうのか!」
「そうか!もう変わったのか!実感ないなー!」
緊張から解放された私たちは自然と笑顔で話していた。
親だから、親なのに… ふふふのふ @stir_flower
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