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「え…マタニティマークをつけてると狙われるって…」

「何だよそれ!ちょっと見せて。」


そこに書いてある事は「妊婦様 邪魔 ムカつく」と批判的な言葉ばっかりだった。


SNSには実際に被害にあった妊婦さんの事例が載っていた。

・電車の優先席の近くに立ってただけで鬱陶しいと罵倒された

・お腹出てないのにマークついてると言われた

・空いているバスだったのにわざわざぶつかってきた

など、妊婦じゃなくても恐ろしいものばかりだ。


「こんなやついるんだな。 これ本当につけた方がいいのかな?」

「どうしよう…悪阻もあるし、何かあった時にお腹に子供がいるって証明にもなるからつけた方がいいって区役所で言われたけど… これじゃどっちが安全かわからないよね…」


祐也と話し合った結果、事故とかがあった時のためにつけておく。

何かされた時はすぐに外す。

爆弾をつけるような感覚でリュックにつけた愛の証。

「私たちを守ってください」そう願うことにした。


調べるたびに不安になる。

妊娠はもっと幸せなものだと思っていたのに、批判されることが多いと知り不安と恐怖で外出するのが怖くなっていく。




健診にいくたび形の変わる“我が子“の成長だけが希望だった。

お腹の子の成長は良好で、予定日の変更もなく自然分娩を望めそうだ。

お腹は徐々に膨らみ、妊娠線ができていく。


「クリームとか塗って気をつけてたのに割れちゃっった…」

「ホントだね… でも勲章だね!これだけ必死に育ててくれてるって言う証だよ!」

「まーね… でも温泉とか水着とか…」

「大丈夫。それでなんか言ってくるやつは俺が守るし、みんな人の子じゃないか。批判してくる人の親だって苦労がいっぱいあったはずだ。批判する奴がおかしいんだよ。」


最近、少し祐也が怖くなった気がする。

決まって子供や妊婦の話をするときだ。

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