第6話 皇帝フリードリヒⅡ世

 ヴィオランテの父の神聖帝国皇帝フリードリヒ二世ですが、物語で書いた以上にイタリアにアイデンティティのあった人物でした。そういう意味では、それまでの神聖帝国皇帝と比較すると異色の皇帝であったと言えます。


 彼の実績としては、神聖帝国の領土を広げるようなこともなく、また、結局は教皇派ゲルフ皇帝派ギベリンの対決にも決着がつけられなかったので、名君かと言われると微妙なところはあります。


 しかし、物語にあるようにアイユーブ朝のアル=カーミルとの親交は想像以上のものがあったようで、衣装なども中東風のものを好むなど、かなりの中東かぶれでした。彼の遺品には中東由来のものが多数あったそうです。

 そういう意味では、ちょっと戦国時代のバサラ大名みたいな感じもしますね。


 彼の事績で最大に評価されるのは、短期間ではあれ、ムスリムとの停戦を実現し、聖地エルサレムを各宗派が統治する和約をなしたことと言われます。これは13世紀にして現代のような形態を先取りしたものとして特筆すべきものです。


 実際の歴史では、彼の死後、後継のコンラートは優秀ではなかったようで、ホーエンシュタウフェン朝は彼の代で断絶します。

 その後、名目上の皇帝は立てられども、神聖帝国全体を実効支配するには至らない、いわゆる「大空位時代」がしばらく続くことになります。


 しかし、それで空中分解してなくならないのが神聖帝国=神聖ローマ帝国の不思議なところで、近代まで存続し続けるのです。

 これは数々の歴史学者の頭を悩ませる難問であるとともに、歴史に見識のある有識者はみな感じていたことでした。


 私としては、そんなゆるゆるでガタガタな中央政権で、地方政権は比較的自由にやれたからこそ、中央政権を潰すまでもなかったということではないかと思うのですが、どんなものでしょう?


 そこのところは、お隣のフランスが中央集権を高めていった結果として、革命の勃発を招き、国王がギロチンで首を切られてしまうという劇的な幕引きとなったことと対照的だなあと思います。


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「転生ジーニアス ~最強の天才は歴史を変えられるか~」制作ノート 普門院 ひかる @c8jmbpwj

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