直観
影神
1.5
普通に。
普通である事を。
あたかも、普通の様にこなす。
一見、簡単の様に思えるこの行動は、
山とある"普通"全てに対処する必要がある為、
とてつもなく、難関と呼べる程に等しいモノとなる。
『僕は昨日56されかけた。』
昨夜。
あの日は確か、僕の大好きな唐揚げ弁当が夕飯だった。
季節の"旬"と呼ばれる味覚。
ご飯は筍と、鶏肉の混ぜご飯だった。
丁寧にお焦げまでついているご飯はもはや、
唐揚げを抑える為の"ご飯"ではなく、
"単体"
としての能力を発揮している。
更に、油揚げ、こんにゃくの、
細やかなカバーも合間見れて、
完全な融合体となっている。
そんなことを考えながら昨日の胸糞悪い夢を思い出す。
それと言うのも、この包丁で、苺なんか切ってるからだ。
滲み出る汁は私の夢の中での惨たらしいシーンを連想させる。
いや、ジャムを作ろうとして、、
イチゴは潰され、中身が飛び散り、壊れる。
今日は早く寝よう。
浴槽にゆっくりと浸かり、嫌なモノを流す。
戸締まりはきちんとした。
ゆっくり寝て、夢を塗り替えよう。
"今日こそは大好きな人が出て来ます様に"
寒い。
ふと、起きた部屋は、3月になると言うのに、
まだ冷たく、体を冷やすような風を送る。
全開の窓から入る風でカーテンが揺れる。
窓は閉めたはずなんだが、、
上半身をかったるく上げようとしたその瞬間、
暗闇でひとがたが動く。
まじか、
瞬時にそれは、昨日の夢の様に、
僕へと襲い掛かってくる。
頼りない、目覚まし時計を手に取り、
振りかざされたナイフを防御する。
人間の直観とでも言うのか。
攻撃を交わされた事に動揺しているのか、
僕を始末しようとする者は様子がおかしい。
まあ、元々こんなことする奴が、
正気な訳がないんだが、、
次の攻撃に備え、部屋の模様を思い出す。
確か、押し入れに、工具用のハンマーが、、
いや、、
僕は昨日やられた後に、跡形もなく、
"やられたんだった、、"
だからここでハンマーを出すのは得策ではない。
椅子だ。
椅子で刺股の様にすれば、、
ベットの上から起き上がり、
椅子まで駆ける。
そんなに広くない見慣れた部屋は、
何処か遠く感じた。
背後から何かを感じ、左へ避ける。
遅れて、右肩に激しい痛みが走る。
痛ッ、、
左手に掴みかけた、椅子の端を引き寄せ、
間へと持ってくる。
激痛と共に、生存への意思を強く持つ。
56されてたまるか、、
まだ、あの子とのムーディーな夜を、
過ごしてねんだよ!!
勢い良く飛んだ椅子はひとがたへと、
引き寄せるかの様に当たる。
僕は爽快感を感じながらも異変に気付く。
見慣れた、腹部にはナイフが突き刺さり、
ドクドク
と、こだましながら濡れている。
痛みと引き換えに、侵入者は窓の外へと帰って行った。
異変に気が付いた弟は、キレ気味に部屋に入ってくる。
『うっせぇ、わ』
助けが来て安心したのか、膝から倒れ込み、
そのまま気が付いたら病院のベットに居た。
幸運な事に、致命傷は避けられ、
翌日には退院した。
少々痛みがあり、動くと傷が疼くが、
今期のアニメの押しの続きが気になるので、
早く帰りたかったのが本音だ。
午前中は警察の取り調べを受け、
午後は普通に通学した。
警察にも口外しないように説得して、
昨日はただ、思春期特有のいろいろなモノに、
耐え兼ね、自室で暴れ、怪我をしたという事になった。
こうして、昨日あった出来事を、
何もない退屈な日々に戻し、
つまらない授業を聞き流しながら、
ノートの端に落書きを始める。
あぁ、夕飯何にしようかな、、
曇りがかった空は今にも雨が振り出しそうだった。
直観 影神 @kagegami
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