教えて! 直観(なおみ)ちゃん!

三衣 千月

直観と直感

和唐菜わからな 以蔵いぞう(以下、以蔵)

「分からない分からない分からないよー!」


直観なおみおねえさん(以下、おねーさん)

「どうしたの? 以蔵くん。今日も分からないことだらけなのかしら。そんなんじゃ、いつまでたっても底辺カースト最下層オタクのままよ?」


以蔵

「やめてよ! 必要以上に貶めるのはやめてよ! 事実だったら何を言ってもいいってわけじゃないんだからね、おねーさん!」


おねーさん

「ごめんね。うわべだけ反省するわ。それで、何が分からないのかしら」


以蔵

「あのね、直観と直感の違いが分からないんだ!」


おねーさん

「それは大変。漢字も似ているし、辞書で調べても違いはあまりないものね。以蔵くん頼みの綱のネット検索でも、ページによって言うことが違うものね」


以蔵

「そうなんだ! この世のありとあらゆるサイトを見比べたよ!」


おねーさん

「そうね、途中で関係のないR-18サイトにも――」


以蔵

「うわぁぁぁぁ!! そ、それでも分からなかったんだヨおねーさん!!!」


おねーさん

「分かった! おねーさんが教えてあげる!! 報酬は?」


以蔵

「え?」


おねーさん

「報・酬・は?」


以蔵

「え、っと……これで……」


おねーさん

「おうおう、漱石さん2人ぽっちだぁ? まだ持っちょるじゃろう、ちょっと跳んでみぃ、お?」


以蔵

「お、おねーさん! そろそろ本題に入らないと! 茶番は300字までって小説の神様が言ってたよ!」


おねーさん

「……チッ。それじゃあ結論から言うね!! 分野によって違うわ!!!」


以蔵

「そんな何の役にも立たない当たり障りのない答えなの!? たとえそれが事実でも嫌だよ! 嘘でもいいから、何か、安心できる指標が欲しいよ!!」


おねーさん

「それを考えるのが一番大事なのにナー。(ったく最近の若いもんはよォ……)」


以蔵

「最後、何か言った? コンプラ的に大丈夫?」


おねーさん

「なんでもない! それじゃあ、簡単に説明するね! はい、これ持って!!」


以蔵

「四角い箱と……ボール?」


おねーさん

「その子たちには名前があるの! ガッチリーとポワソンちゃん!」


以蔵

「へえ……それで?」


おねーさん

「ポワソンちゃんをこっちに投げて!」


以蔵

「……? はい」


 デデデデデン!!!

(ナレーション)ここで以蔵くんが放り投げたのは丸いボール。それを受け取って直観おねーさんは口の端をにやりと上げる。

 みんなは、おねーさんの言いたいことが分かったかな? それでは続きを見ていこう。

 デデドン。


おねーさん

「貴様……今、なぜボールを投げた・・・・・・・・・?」


以蔵

「え、だって丸い方がポワソンっぽい……あ!」


おねーさん

「そう、一言も、丸い方がポワソンちゃんだなんて言ってないの。でも、なんとなく分かったはずよ。これが、直感。感覚で物事を判断する力の事を指すの。ちなみに今の実験はブーバ・キキ効果で検索するともっと詳しい話が分かるわよ!」


以蔵

「そ、それじゃあ直観は?」


おねーさん

「字数と時間がないから巻きで話すわね。直観は、経験則に近いものがあるわ。これまでに積み上げてきた経験から、無意識のうちに本質を見抜く力。これが直観よ」


以蔵

「……ちょ、ちょっと待っておねーさん! 分からない分からない分からないよ!」


おねーさん

「あ”? 巻きだって言ってんだろうが」


以蔵

「だ、大事なことなんだ! 靴下に隠してある諭吉さんも渡すから聞いてよ!」


おねーさん

「ロスタイム大歓迎よ! どうしたの!?」


以蔵

「僕が、もしも前もって『ガッチリーとポワソン』を知っていたら、それは直観になるんじゃないの?」


おねーさん

「……ほう、そこに気が付くか……面白いヤツだ」


以蔵

「あ、まだやるんだそのキャラ」


おねーさん

「小僧。一ついいことを教えてやる。読者にとって、作中内のそれが経験則からくる直観であったか、感覚からくる直感かは、見分ける方法はない・・のだ」


以蔵

「なん……だと……ッ?」


おねーさん

「それゆえにッ! 作者は事前に知らしめておく必要があるッッ!! 伏線として、描写として、情報として、事前に経験を積んでいたかどうかをなァッ!!!」


ズガピシャァァァァン

(ナレーション)諸説あります。


以蔵

「そんなの、そんなの、作者が好きに決められるってことじゃないか!!」


おねーさん

「だから最初に言ったでしょう? 分野によって解釈も考え方も違うのだから、どんな分野の話をしているかはちゃんと提示しておかなきゃ。デートコースもそう。サプライズで喜ぶのは、計画している方だけよ。ええ、本当に……本当にね……」


以蔵

「どうしたの、おねーさん」


おねーさん

「オシャレして待ち合わせしたら今日はハイキングしよう! って言われたアタシの気持ちが分かんのかってことだよ。察せよ、な?」


以蔵

「ぼ、ぼく、彼女いたことないし……」


おねーさん

「覚えとけ。デートは二人でするもんだ。自己満足で勝手にプラン決めてんじゃねえ」


以蔵

「は、迫真だね……」


おねーさん

「今回みたいに、意味合いがたくさんある言葉を使う時もそうなの!! 読者に共有したい情報は、読者に負担のない範囲で事前に、さらりと出しておいてね! おねーさんとの約束よ! それじゃ、おねーさん合コンだから!」


以蔵

「い、行ってらっしゃい」


おねーさん

「あ、靴下脱げよてめー。諭吉よこせ。じゃーねー、ばいばーい!!」



ぱぱーぱっぱぱっぱー(EDテロップ)

こうして、以蔵くんはまた一つ、分からないことを解決して大人への階段を上るのだった。

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教えて! 直観(なおみ)ちゃん! 三衣 千月 @mitsui_10goodman

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