第3話 住所氏名発見……あとは?
俺は、ホワイトデーに関するアドバイスを兄貴や葵の兄貴の茂生君からもらった。同級生には面倒なんで話さなかった。が、話題に上っていたので少しは参考にした。
兄貴と茂生君は、全く逆な事を言ったんだよな。どうしようかな。
「あれ? 好きな子にキャンディを返して、あきらめてくれ、って子にマシュマロとかクッキー渡すんじゃなかったか? 」
そう兄貴が言うと、茂生君は、
「僕はその逆を聞いたけど。好きな子にはクッキー、マシュマロで、そうでない子にはキャンディだとね」
「えっ?
「始は誰に聞いたんだよ」
「俺か? 友達だよ」
「同学年だな。僕は女子がそう話をしていたのを聞いたんだよ」
「お前だって同級生じゃねーかよ」
兄貴と茂生君が言い合いをしている。
「もう、どっちでもかまわないよ。要するに、何かをお返しすれば済むんだろ。誰にもらったかを先に調べてみるよ。ありがとう」
「わかりそう?」
……葵、お前はお気楽でいいな。
「……なに?」
「いや、別に」
「ママが、昔の保護者名簿を探してくれてる。だから……それが見つかったら家がわかると思う」
本当に面倒くさい。もらったままバックレたい。でもな、うちは一応会社経営しているし……子どもの間でいざこざが起こって、嫌なうわさでもされたら、俺、すっげー嫌だし。なんで会社経営なんかしてんだよ、パパ!!
「あっ、そうか、PTA名簿だね!基あったまいい!」
……葵が悪いんだ。って言ってやりたいが、そのあとのコイツがうるさいからやめとく。
三人の住所は割と早くわかった。全員、去年一緒のクラスだった子達だった。……記憶にない。特に顔とかが……。
それから二週間が過ぎた。
「基、何をあげるか決まった? 」
学校からの帰り道で、葵が思い出した様に聞いてきた。それもそのはずだ。通学路の途中にあるあちこちの店で、バレンタインデーの時とは規模が違うけど、ホワイトデーのコーナーがちらほら見える。葵は自分が欲しそうな顔をしている。
「うん。面倒くさいから、全員クッキーを返す事にした」
「ふうん。クッキーかあ……お小遣いが少なくなっちゃうね」
コイツ、人の小遣いの心配してやがる……お前は平和でいいな。
しかし、そんな心配はいらないのだ!
「兄貴と俺のホワイトデーのお金はママが払ってくれるから、そこは大丈夫だ。ばーか」
「えっ?そうなんだ!よかったね、ってか、ばーかは余分だろー!ばーか! 」
ああ、全くコイツは小うるさい。
「それで? どうすんの? 」
ほらな……絶対コイツは聞いてくる。
「三人ともうちよりちょっと離れているからさ、学校から帰ったら、ママが車出してくれるって」
「えっそうなんだ。
「兄貴はどうだろう。まだ聞いてないけど。茂生君はどうするんだ? 」
「
ケチはいいから、信号待ちの間に俺を見るクセをやめてもらいたいんだけどな。
コイツはチビだから、俺と歩幅が合わない。信号待ちの時、俺の一歩を踏み出すタイミングをいつも見ているんだ。ウザい。言っておくけど、俺はお前に合わせてゆっくり歩いているんだぞ。わかってねーな。葵は俺が踏み出すと、急いで自分の足を前に出した。バカだ……。
その頃、二人の母親たちが自分たちのホワイトデーについて語っていようとは、思いもしなかった。
「ねえ、お姉ちゃん、息子が二人いると物入りねえ」
「何を言ってるの。
「それはそうだわねえ。私も女の子欲しかったわあ。男の子って、今はいいけど……だんだん話し相手になってくれないみたいじゃない。そろそろ始や茂生がそんな感じしない?」
「そうねえ。今年は二人とも中学生だしね。茂生なんか、もう私とは買い物に行きたがらないのよ。つまらなぃわあ」
「なによう。お姉ちゃんには楓がいるでしょう。基よりも葵の方が話し相手になりそうだし。羨ましいわあ」
「そうだわねえ。葵は結構付き合ってくれるわね。妹がいるせいかしらねえ? 」
仲の良い姉妹は、洗濯物をたたみながらおしゃべりをしていた。姉の松乃宅へ妹の琴子が遊びに来ていた。
「琴ちゃん有難うねえ~助かったわ。さて、お茶にでもしましょうか」
「あっ、いやだ私ったら、お茶菓子持って来たのよ!ねえ、ダージリンにしてくれる?クッキーを味見に買ってみたのよ。私たちも食べましょうよ」
「味見……?何の味見よ」
「基がねえ、ホワイトデーのお返しにクッキーをあげるって決めたらしいから、手頃なのを選んでみたのよ。茂生は? どうするのかしら。始はまだ決められないって」
「え? 何なの? それってバレンタインデーのお返しの事よね? 」
「そうよ? 茂生だってもらったんでしょ? 」
「え……聞いてないわよ。初耳だわよ! ねえ、なんであなたが知ってるのよぉ!」
そんな会話がされているとは全く思いもしない。茂生君が松乃おばさんに話をしていなかった事も俺らは知らなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます