第38話 はと その1

 ある日の晩ご飯の時間。

 お姉ちゃんは、有る悩みを私に話し出した。


「最近、ベランダにはとが来るのよね~~」


「鳩…?」


「そう、鳩。最近、良く来るのよ!」


 洗濯物はお姉ちゃんが干して、私が取り込む。

 でも、私が取り込む時に鳩は見かけない。


「鳩に“フン”を付けられると、洗濯物がダメになっちゃうね…」


「そうなのよ、恵那!」

「物干し竿に止まられたら、一巻の終わりよ!!」


 お姉ちゃんは言葉を強めながら言う。

 鳩に恨みを持っていそうな感じで有った。


「お姉ちゃん」

「何か、対策をしなくちゃね!」


 私は、そう答える。


「えぇ、そうだね!」

「まぁ、色々考えてみるわ!!」


 鳩の話は、その日はそれだけで終わった。

 でも、話は其処で終わらなかった……


 ……


 そして、ある日の休日朝。


「恵那! 恵那!!」

「ちょっと、こっち来て!!」


 私が、部屋の掃除がけの準備をしていた所を、お姉ちゃんに大声で呼ばれる。


「大きな声出して、どうしたの?」

「お姉ちゃん…?」


「来たのよ! あれが!!」


 すると、お姉ちゃんは私の手を引っ張って、そのままベランダに連れて行かれる。


「ほら、恵那。此処に鳩がいる!!」


 お姉ちゃんは、そっとカーテンを開けて指を差す。

 指さす方向には、鳩がいる。


「お姉ちゃん…」

「あの鳩が、最近良く来る鳩?」


「たぶん、そうよ!」


 お姉ちゃんは決めつけた様に言う。

 鳩は、ベランダの手すり部分に止まっていた。


「お姉ちゃん。そのまま、追い払えば良いんじゃないの?」


「それではダメなんだよ、恵那!」

「鳩は意外に頭良いから、私達が居なくなったら、又来るのよ!」


『ガシ、ガシ♪』


 鳩は私達が監視しているのを横目に、手すりを“のんびり”歩き始めた。


「あっ、歩き出したよ。お姉ちゃん!」


「くっ、えらい……今日は居座るな~~。鳩め!!」


 鳩で苛ついている所為か、お姉ちゃんの口調が変わっていた!

 そして、有る部分で立ち止まった鳩は、今度は鳴き出す。


『クゥ~クゥ~。ポッ、ポッ、ポッ~―――』


「お姉ちゃん。鳩が鳴き出したね…」


「くそっ!!」

「何だか……段々、むかついてきた!!」


 お姉ちゃんに我慢の限界が来たらしく『ガラッ』と窓を開ける。

 しかし、窓を開けても、鳩は鳴くのを止めても飛び立たない!?


 その仕種を見たお姉ちゃんは、更に頭に来たらしく、鳩を捕まえるような勢いで鳩に向かう。

 さすがに危険と感じた鳩は、飛び立つ。


『バサ、バサ、バサ―――』


『ビチャッ!』


「あ~~~!!」


「あっ、フンを落としていったね。お姉ちゃん…」


 鳩はお土産を残して飛び立って行ったと思ったら、近くの電線に止まり、こっちを見ていた。

 私が鳩を見ると、鳩は『ふん! ざまーみろ!!』の顔をしている様だった。


「くっそ~、やられた~~」


 お姉ちゃんは、えらく憤慨している。


「取りあえず、拭かなくちゃね……」


 私は雑巾を取りに行こうと、下に向かい始めた時に……


「恵那……。洗濯物干し終わったら、お姉ちゃんは、買い物に行ってくるね…」


 お姉ちゃんは、体を“プルプル”震わせながら喋っている!?


「おっ、お姉ちゃん……急にどうしたの?」

「それに、今日……特売何か、有ったっけ?」


「潰す!」

「鳩、潰す!!」


 すごく、物騒な発言をするお姉ちゃん!!

 おまけに会話が噛み合っていない。


 お姉ちゃん。鳩の事で周りが見えなく成っていた。 

 初めて見る、お姉ちゃんの切れた姿で有った!!

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